人材ファーストの企業戦略(Talent Wins)

2020年1月19日

人材ファーストの企業戦略(Talent Wins)

21世紀に勝ち残るカギは戦略ではなく「人材」

 21世紀に勝ち残るカギは、戦略ではなく、「人材」にあると、著書「Talent Wins 人材ファーストの企業戦略」では説かれます。
 AIやロボットなどの進化はありますが、それらを司る、いわゆる本当の頭脳たる人の戦力化無くして、成長はありえないでしょう。

 世界屈指の企業経営アドバイザーと言われる、ラム・チャラン/ドミニク・バートン/デニス・ケアリーの3人が、人材を最大限に活用し、成功するための企業戦略を説いた書籍ですが、内容をかいつまんでご紹介いたしましょう。

人材ファーストの組織へ基盤となる3体制

 人が価値を生みだす「人材ファースト」の組織へと変革する上で、基盤となるのは、次の3つと説かれています。

  1. G3を創る:
     人事と財務を適切に連動させられるよう、CEO、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)から成るG3体制を確立する。
  2. 〈クリティカル2%〉を特定し、育てる:
     平均的な社員の何倍もの価値を生みだす社員を見極め、スキルを向上させる。
  3. 人事をデジタル化する:
     最先端の、人材志向の、データに基づくテクノロジーを活用する。

 3Cでは無く、なぜ3Cなのかは、突っ込まないでいただきたいところです。

職場を人材ファーストへ変革する3要素

 変革の基盤が整えば、職場を人材ファーストへ変革する。そのために必要なのは、次の3つの要素だということです。

  1. アジリティ(機敏性)を備える:
     大半の意思決定をチームや個人に任せ、社員全員が自発的に動けるようにする。
  2. 「プラットフォーム」を考える:
     小規模なユニットに意思決定や人事の決定などを委ね、社員の創造性を引き出す。
  3. 仕事を意義あるものにする:
     社員を変革の中心に据え、仕事の意義を探究する。

個々に応じて人材開発がマスト

 人材主導型企業は、万人向けではなく、個々に応じて人材開発を行わねばならない。そのためのステップは、次の3つだそうです。

  1. デジタルツールを活用して、〈クリティカル2%人材〉を最適な仕事に配置し、成果をモニタリングする。
  2. 社員に対し、年に一度の年次評価ではなく、適宜、複数の方面から効果的なフィードバックを行う。
  3. 全社員が、継続的に学習し、スキルを向上させられるよう人材開発のシステムを改造する。

変革のツールを作りあげる

 今日の経営幹部の大半は、人材こそが競争優位を生みだすことを理解しています。しかし、企業の人事制度は一世代前の遺産のところが多いですね。
 いわゆる将来が予測できる環境で、人を管理するためのものだと言えるでしょう。

 近年、仕事も組織も流動的になるにつれ、事業戦略は予測可能な向こう数年間の計画を練ることではなく、変化する環境の中で、新たな機会を察知し、獲得することを意味するようになりました。

 そうした変化に対応するには、「戦略ファースト」から、人が価値を生みだす「人材ファースト」の組織へと変革しなければならないと説かれます。

人事をデジタル化する

 1の3番目ツールとして紹介されているのは、最先端の、人材志向のデータに基づくテクノロジーの活用です。

 例えば「採用」であれば、SNSや履歴書、公開データをリンクさせて求職者を見つけられます。
 また、AIを活用してSNSを閲覧し、そのスキルや性格に合った仕事の候補を挙げるシステムもあります。

 このようなデータアナリティクスを採用活動に導入すれば、人間による無意識な偏見にとらわれるリスクを軽減できます。
 また、大量のデータを分析するデジタルツールは、退職を考えている社員とその理由を察知する上でも有効でしょう。

 変化を求める2%の人材に、どのタイミングで大きな仕事を任せれば、彼らの転職を防ぐことができるかを教えてくれるようになるということでした。

才能ある個人を解き放つ

 先進的な企業は、人材が才能を発揮できるような環境を整えるために組織を改革しているそうです。
 そして彼らはそこで改革の手を止めません。様々な種類の最新テクノロジーを活用し、研修や報酬、キャリアパスをカスタマイズしています。

 人材主導型企業では、万人向けのやり方は使えません。個々の人材の要望に応じた、人材開発を行わなければなりません。
 社員のスキルを効果的に向上させるためのステップは、次の3つと説かれます。

  1. ツールを使い、トップ人材を最適な仕事に就かせる
  2. 評価や報酬のプロセスを再考する
  3. 全員を常にトレーニングする

 継続的に全社員が学習し、スキルを向上していくよう、人材開発のシステムを改造することが肝要と主張されていますが、強く納得するものです。

 人材開発は、実は多くの企業で後回しになっている気がします。しかしながら、人材こそが価値を生みだすと本気で信じているなら、社員のポテンシャルを最大化するために何でもするのが理にかなっています。

 社員は、「自分は継続的な教育と機会を提供することが正しいと信じる企業で働いている」と感じるようになり、このような動きは、会社全体を活気づかせるとともに、市場での競争に勝つために必要である鋭敏な緊張感も生みだすそうです。

 ぜひ、そのような人材・組織になりたいと痛感した本でした。

書籍紹介

Talent Wins 人材ファーストの企業戦略

ラム・チャラン/ドミニク・バートン/デニス・ケアリー共著
中島正樹/堀井摩耶/齋藤佐保里監訳/栗木さつき訳
日本経済新聞出版社 2019年10月25日発行/251頁 2,200円+税

  • 主要目次
  • 1章 変革のツールを作りあげる
  • 2章 人材主導戦略を推進するため取締役会を強化する
  • 3章 組織の仕事を設計し、再設計する
  • 4章 人事部門を競争優位の源泉にする
  • 5章 才能ある個人を解き放つ
  • 6章 人材のためのM&A戦略
  • 7章 人材の課題に取り組む

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