任せるリーダーが実践している1on1の技術からの学び

2020年1月20日

任せるリーダーが実践している1on1の技術からの学び

リーダーが身に付けて組織に定着させたい1on1スキル

 上司と部下が1対1で話すことで、様々な効果がもたらされると説かれた書籍です。
 近年、あらゆる業種で導入が進む「1on1」の概要、実践するための具体的なスキルについて、わかりやすく説かれていました。

主要目次

  • PART1:経営者・人事部のための全社的視点での1on1
    • 1章:1on1って何だろう?
    • 2章:1on1導入の4つのステップ
    • 3章:導入に際してよく寄せられる疑問
  • PART2:管理者のための現場視点の1on1
    • 4章:必要な5つのスキル
    • 5章:あると便利な5つのメソッド
    • 6章:欠かせない5つのマインド

(小倉広氏著、日本経済新聞出版社、2019年5月21日発行/214頁)

1on1って何だろう?

 今、「1on1ミーティング」が注目されているそうです。
 「1on1ミーティング」とは、「上司と部下の間で、週1回~月1回、30分~1時間程度、用事がなくても定期的に行う1対1の対話」のことだそうです。
 シリコンバレーを中心に、米国では多くの企業が1on1を実践しているとのことでした。

1on1で「会社と社員のエンゲージメント」が高まる

 1on1により「会社と社員のエンゲージメント(絆・愛着)」が高まるそうです。その結果、次のような副次的効果が期待できるとされていました。

  • 組織のアジリティ(俊敏さ)とスピード向上
  • 意欲向上
  • スキルアップ
  • 問題の早期発見など

1on1の期待される効果

 1on1の目的は、短期的な業務の課題解決ではありません。
 1on1により期待される効果として、まず「会社と社員のエンゲージメント(絆・愛着)」があります。

 グーグル社が実施した、高業績チームの秘訣を探るプロジェクトで明らかになったことがあるそうです。
 それは、高業績に最も大きく影響を与える因子が「心理的安全性」であったことだそうです。
 「誰もが均等に話す機会がある」「自由に意見が言える」「否定されない」、これらの条件があることで初めてチームの業績が高まるのとのことでした。

 このように、心理的安全性が業績に影響を与えることが明らかになったからでしょうか、近年、エンゲージメントが注目されているそうです。

 絆・愛着が高まれば、次のような様々な副次的効果が期待できるとされていました。

  • 組織のアジリティ(俊敏さ)とスピード向上
  • 意欲向上
  • スキルアップ
  • 問題の早期発見
  • リテンション(人材の維持・離職防止)など

1on1の目的:2つのサイクルを回す

 1on1の目的は、短期的な業務の課題解決ではないそうです。中長期的な自立的人材の育成、およびエンゲージメントの構築にあるということです。
 その際、留意したいのが、次の2つのサイクルとされています。

経験学習サイクル

 1つ目は、デビッド・コルブが示した「経験学習サイクル」です。
 人は知識から学ぶのではありません。経験から知識が導き出された時に、初めて深い学びが起きます。

 著者は、経験学習サイクルを活用するために、上司が1on1でできることを以下の4つの役割で定義していました。

  • 「質問」
  • 「要約・言い換え」
  • 「勇気づけ」
  • 「任せる」

 部下が仕事を通じて、成功や失敗などを経験し、それを内省します。
 内省を支援するのが「うまくいったポイントは何か?」「どうすれば失敗を避けることができたのか?」といった上司の「質問」だそうです。

 すると、「あの時に早めに関連部署に相談すれば良かったな」などと、部下の頭の中にあるナレッジが引き出されるそうです。
 しかし、それらはうまく言葉にならないことも多いですね。そんな時、上司は部下の言葉にならない思いを察し「要約・言い換え」で概念化を支援します。

 その際は、臨床心理学者ユージン・ジェンドリンらが提唱する「テスティング・アンダースタンディング(理解の確認)」を行います。
 「あなたの本心は~であるかのように聞こえましたが、それで合っていますか?」と頻繁に確認するそうです。

 部下はこれにより、自分でも気づいていなかった新たな意味解釈やポイントに気づき、成長につながるということです。
 このようにして知恵が概念化されたら、すぐに次の経験にフィードバックして生かします。

 このサイクルを何度も回すと、部下の経験、知恵が積み重なり、成長していくそうです。
 上司はこのサイクルにおける矢印部分を担い、回転を加速させるのが役割だとしていました。なるほど合点ですね。

組織の成功循環モデル

 2つ目のサイクルは、ダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」です。

 このサイクルは、「関係の質」から始まる点がユニークです。
 一般的に多くの組織は、このサイクルの始まりを、「結果の質」を求めることから始めがちです。

 「結果はどうなっている?」と結果を追求すると、部下は、上司との関係を疎ましく思います。そして「関係の質」が悪くなります。すると「思考の質」も「行動の質」も下がるそうです。

 結果として、一番欲しかった「結果の質」までも下がってしまうわけです。
 キム教授の提言は、スタートを変えることにあります。

 最初に「結果」を求めず、「関係の質」を向上させるそうです。
 すると、「思考の質」「行動の質」が上がって、「結果の質」も上がるそうです。

 先に紹介したグーグル社におけるプロジェクトの結論は、「心理的安全性が高い業績を生む」というものでした。
 それこそまさに、この成功循環モデルのメッセージと同じ内容でしょう。

1on1に必要な管理職の5つのスキル

 1on1に必要な管理職のスキルは、次の5つだそうです。

  1. 傾聴:
    相手の話を共感して丁寧に聴く。1on1のベースになるもので、「相づち」「沈黙」などのスキルがある。
  2. 勇気づけ:
    相手のマイナス面ではなく、プラス面に注目し、自らもプラスの感情を持って接する。人は勇気づけられると、自立的に困難を克服しようとする活力が高まる。
  3. 質問:
    上司が部下に「自己決定」を促すことで、有能性が向上する、つまり勇気づけになる。それには、「どのような方法をとればうまくいくと思いますか?」と質問し、提案に対して「やってみましょうか」と承認を与えるとよい。
  4. フィードバック:
    部下に、目標と行動とのギャップを伝える際は、客観的な「事実」のみ伝える。推測や意見を交えたフィードバックは相手を傷つけ、上司への反感を生む。
  5. 結末を体験させる:
    失敗体験にも学びがある。従って、部下の体験に対して先取りして説教しないこと。そうではなく、「その体験から何を学びましたか?」と質問する。

定期的なチェックで組織にクセをつけたい

 長くなってしまうので、このあたりで終わりにしたいと思いますが、とても参考になる書籍でした。
 失敗・ミスに対して、意図せずに時として責めてしまうようなこともなるので注意しなければと反省しました。

 定期的に読み返して、責任職務の人たちにはチェックしてもらい、きちんとできているか点検が必要だと感じました。

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