戦略を実行できる組織、実行できない組織、4規律

2021年12月3日

戦略を実行できる組織、実行できない組織

戦略を実行できない原因を示し、戦略を実行するための原則

 戦略を策定できても、うまく「実行」できず、頭を悩ますリーダーや経営者は多いものです。なぜ実行できないないか、その原因を示し、戦略を実行するための原則が紹介されています。

 数百の企業と政府機関を調べたところ、実行を邪魔する要因がいくつか見つかったそうです。まず、目標の曖昧さがあり、実行すべき目標をわかっていない人が多いとのことです。また、目標に対するコミットメントの欠如も問題で、目標を達成しようという意欲が乏しかったということです。

実行の邪魔は日常業務であり、「実行の4つの規律」で突破する

 実行を邪魔する本当の敵は、日常業務だそうです。
 前進するために設定した目標は重要ですが、「緊急の仕事」と「重要な仕事」が衝突すれば、必ず緊急の方に軍配が上がります。
 緊急の仕事をないがしろにしたら、あなたは今日にも生きていけないかもしれません。しかし重要な目標を無視したら、明日はないと説きます。

 日常に埋没しないのは難しいですが、試行錯誤の末、それを可能にするためのルール「実行の4つの規律」が導き出されています。

  1. 第1の規律:最重要目標にフォーカスする
  2. 第2の規律:先行指標に基づいて行動する
  3. 第3の規律:行動を促すスコアボードをつける
  4. 第4の規律:アカウンタビリティ(報告責任)のリズムを生み出す

 4つの規律は、一見、簡単に思えます。しかし、簡単ではありますが、決して単純なものではありません。

最重要目標にフォーカスする

 やることを増やすほど成果が上がらないのは、ものの道理です。誰もが経験している、避けられない明白な原則です。
 従って、最初の課題は、「最重要目標を絞り込む」ことです。本当に重要な目標を1つ(多くて2つ)選ぶことだそうです。

 これを「最重要目標(Wildly Important Goal:WIG)」と名づけ、何よりも重要な目標であることをチームにはっきりと示すことが肝要です。

人間は一度に1つのことしか完璧にできない

 目標が多すぎると、焦点が消えてなくなり、チームのメンバーはわけがわからなくなります。実行など到底望めません。
 人間は、遺伝子的に一度に1つのことしか完璧にできないそうなのです。

リーダーの悩み

 では、なぜ目標を増やす方へと傾いてしまうのでしょうか?

 絞り込む必要性は十分にわかっていながら、いざとなると絞り込めません。なぜでしょうか?

 その原因はリーダーが野心的でクリエイティブであることです。クリエイティブで野心的な人間は、常にもっと多くやろうとします。
 もっと少なくしよう、などとは考えもしないわけです。
 また、危険の分散があります。あれこれ手を出せば、どれか1つはうまくいくだろうと期待するものです。

 そして、目標を絞り込む時にリーダーが直面する最大の問題は、良いアイデアを無視できないことだそうです。
 困ったことに、良いアイデアというのは一度に全部陳列されるわけではなく、ほどよく小出しにされるから、つい手に取ってしまいます。
 かくしてリーダーは、自ら罠にはまるわけです。

 アップル社が米国における過去10年間の最優秀企業に選ばれた時、当時の最高執行責任者ティム・クック(現CEO)は、こう語ったそうです。
「私の知る限り、当社は最も焦点を絞った企業です。毎日、良いアイデアを不採用にしています。製品の数を絞り、それに全精力を注ぐために、ずば抜けたアイデアさえ採用しないこともあります」
 良いアイデアを頑としてはねつける姿勢が、競合他社をことごとく蹴散らしたのですね。

先行指標に基づいて行動する

 どのような戦略を実行するのであれ、その進捗と成功は、2種類の指標で測られます。「遅行指標」と「先行指標」だそうです。

遅行指標VS先行指標

 遅行指標とは、最重要目標を追跡する測定基準です。売上高、利益、マーケットシェア、顧客満足度は全て遅行指標です。
 これらのデータを手にした時には、そのデータをたたき出した活動はすでに過去のものとなっています。だから、もはや手の施しようがありません。

 一方、先行指標は基本的に、遅行指標における目標の達成に向けた新たな活動を測定します。
 例えば、「来店客全員に試供品を提供する」といった単純な活動も、「ジェットエンジン設計の規格を守る」といった複雑な活動も、先行指標になります。

 適切な先行指標には、2つの基本的な特徴があるそうです。目標達成を「予測できる」こと、そしてチームのメンバーが「影響を及ぼせる」ことだそうです。

先行指標の活動に集中する

 第1の規律では、組織の最重要目標を決めました。
 第2の規律では、チームの目標達成を可能にする活動を定めます。
 すなわち、先行指標を決め、その活動にチームの労力の大部分を注ぎます。これが、遅行指標における目標を達成するテコになります。
 遅行指標は目標が達成できたかどうかを教え、先行指標は目標を達成できそうかどうかを教えます。

 先述の通り、遅行指標に対してできることはほとんどありません。しかし先行指標の方は、自分の力でどうにでもできます。

 一般的には、最重要目標を定めたら、その目標を達成するために必要な作業をリストアップし、詳細な計画をたてるのが当然だと思うでしょう。
 しかし、第2の規律ではそのようなことはしません。
 毎日または毎週測定する指標を定め、それを達成すれば、最重要目標の達成に結びつく指標を策定することが重要です。
 次に、チームは毎日または毎週、それらの先行指標を前進させる最も重要な活動を決めます。

 このようにして、WIGにフォーカスしながら、その時々に必要なジャスト・イン・タイムの計画をたてることが肝要です。

行動を促すスコアボードをつける

 第3の規律は、チームが勝っているのかどうかを全員がわかるように、常にスコアをつけるという規律です。
 先行指標と遅行指標の推移を、ビジュアルなスコアボードに記録し定期的に更新しないと、指標はたちまち竜巻に吹き飛ばされ、消えてなくなります。
 要するに、スコアがわからなければ、人はやる気をなくします。

 第3の規律で確立したいのは、コーチのスコアボードとは全く異なる「選手のスコアボード」です。
 チームの試合であることを表す選手のスコアボードが必要なわけです。
 行動を促す選手のスコアボードの特徴は、次の4つだそうです。

  1. シンプルである。
  2. チームのメンバー全員に見える。
  3. 先行指標と遅行指標の両方が示されている。先行指標はチームが影響を及ぼせる活動であり、遅行指標はチームが求める結果だ。両方の指標を常に見ていなければ、チームはすぐに興味をなくしてしまう。
  4. 勝っているのか負けているのか、瞬時にわかる。

アカウンタビリティのリズムを生み出す

 第4の規律は、アカウンタビリティのリズムを生み出すことです。
 定期的に実績を報告し、スコアを動かす計画をたてる循環的なプロセスを定着させます。
 具体的には、チームは最低でも週に1回のWIGセッションを持つことです。
 このミーティングは20~30分程度にし、議題を設定してスピーディに進め、WIGを前進させるアカウンタビリティのリズムを確立させます。
 この規律が、まさに実行の成否を分けます。

まさに我が意を得る、ありがたい本でした。

書籍案内

戦略を、実行できる組織、実行できない組織

  • クリス・マチェズニー/ショーン・コヴィー/ジム・ヒューリング共著
  • フランクリン・コヴィー・ジャパン訳
  • キングベアー出版
  • 2013年5月25日発行/417頁
  • 2,100円

著者紹介

  • クリス・マチェズニー
    • フランクリン・コヴィー社のグローバル実行プラクティス・リーダー、「実行の4つの規律」の開発者のひとり。
  • ショーン・コヴィー
    • フランクリン・コヴィー社のグローバル・ソリューション&パートナーシップ事業部エグゼクティブ・バイス・プレジデント。
  • ジム・ヒューリング
    • フランクリン・コヴィー社のソリューション4Dxのマネージング・コンサルタント。

主要目次

  • 1部 実行の4つの規律
    • 第1の規律:最重要目標にフォーカスする
    • 第2の規律:先行指標に基づいて行動する 他
  • 2部 4Dxのインストール:チーム編
    • 4Dxに期待できることは何か
    • 第1の規律をインストールする:最重要目標にフォーカスする 他
  • 3部 4Dxのインストール:組織編
    • 4Dxのベストストーリー 他

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