請負契約と委託契約の違い(民法632条・656条)

2020年1月24日

請負契約と委託契約の違い

請負契約と委託契約は何が違うのか?

 当方にも良く質問がきます。本来は弁護士先生マターなのですが、外部委託・アウトソーシングを利用するときに知っておきたい、請負、委託、この外部業者との契約形態の違いについて述べてみます。いずれの契約もその当事者は法人であっても個人であっても構いません。

請負契約とは?

 請負契約の対象は『仕事の完成』です。

 請負とは、発注元がある仕事の完成を依頼し、受注側が実際に完成物、成果物を納品して、通常はその結果に対して報酬が支払われるという契約のことを指します。従業員や下請を何人使おうが、材料を何処からいくらで仕入れようと、完成までのプロセスには注文主は一先関与しませんよ、引き受けた方の全責任ですよ、といったような契約です。

 法的には民法632条にこの請負に関する規定があり、ポイントは「仕事の完成」という部分であるとされています。
 土木工事や建築工事や構築物工事、システムの受託開発などによく見られます。
 価格は、通常、完成された仕事に対し幾らと予め、固定価格で決められる場合が殆どです。

請負契約のメリット

 仕事を発注・依頼する側からすれば、完成物が納品されるのを待つだけなので労力がかかりません。
 発注時の綿密な打ち合わせやディレクション、進捗状況の報告、納入品の精査などは必要かもしれませんが、それ以外は基本的に相手に仕事を「丸投げ」する形となります。

請負契約のデメリット

 デメリットは、こちらの思惑とは異なる完成物が納品される危険性があることで、最悪、何らかのアクシデントが起こって完成しないまま終わることもあり得ます。長年の信頼関係が構築されていれば、安定して良好な取引となるかもしれませんが、初めての相手の場合にはリスクが大きいスタイルともいえるでしょう。
 ただし、発注した意図と著しく違ったものが納品されたり、不具合などが多く見つかったりした場合は、報酬を減らす、あるいは支払わないという交渉もあり得ます。

委託契約とは?

 委託とは、発注者が依頼した業務を受注者が行う契約のことを指します。完成物や成果物を渡すなどの義務はありません。
 法的には民法656条に準委任というものがあり、この「法律行為でない事務の委託」を拡大した「業務の遂行」のことと解釈できます。
 契約対象は、「善良な管理者の注意をもって処理した指定業務」ということになるでしょう。
 報酬は、一定の処理件数や時間に応じて決まります。

 受注側からすれば、請負のほうが責任が重いという側面もありますが、委託は長期継続して行われることも多く、また依頼主である会社の従業員になり代わって業務を行う側面が大きいため、請負とはまた異なる意味での責任を負うことになります。

 例えばビル管理、システムのメンテナンス、文書や情報の管理代行、事務作業の委託、行政からの民間への委託などがこれにあたります。
 価格は、月幾らとか、処理1件毎に幾らなどと決められることが多いようです。

委託契約のメリット

 発注する側が委託で得るメリットは、請負と比べての違いというよりは、自社内でその業務を行う場合と比べてという側面が強いと考えられます。
 業務委託を行えば、人材確保、人材教育、労務管理などの手間がかからなくなり、人件費も節約できます。また、特定の業務を専門に行なっている業者を利用すれば、プロに任せられるという安心感も得られます。

委託契約のデメリット

 デメリットは逆に、直接の指導やディレクションが行き届かず、日常の業務を委託先の業者に任せることになる点です。最悪のケースとしては委託先業者のスタッフが大きなミスや不祥事を起こし、依頼主である会社のブランドイメージまで損なわれることが考えられるでしょう。
 ただ、委託の場合も一定期間業務を任せてみて、もしも不満点などがあれば業者を変えればいいという選択があり得ます。

請負と委託の両者の違いを理解し適したアウトソーシング活用を

 このように請負と委託、両者の違いについて理解しておけば、自社にとってより適したアウトソーシングの活用法も見えてくるでしょう。

【PR】ISO構築・運用コンサルなら(株)グローリレイションへ