BCP構築の重要ポイントと外せない流れ
2024年11月に国交省認定建設業BCPを4社支援
当社では、2024年11月に国交省認定の建設業BCPを4社支援し、なかなか忙しいものがありました。その体験においての気付きをまとめておきます。
BCP(事業継続計画)は、災害や事故発生時に事業の中断を最小限に抑え、早期復旧を可能にするための重要な仕組みです。リスク管理の観点から、事業の損失を軽減し、取引先や従業員の信頼を守ります。また、社会的責任を果たし、地域社会や経済の安定にも寄与します。さらに、従業員が冷静かつ迅速に対応できる体制を整えることで、混乱を防ぎ、二次被害を防止します。
BCPは自然災害が猛威を奮う現代にあって、企業の存続と社会的価値を守る「生命線」として不可欠になりました。
BCPの策定の流れと重要なポイント
BCPの策定の流れと重要なポイントについて説明します。
1. 基本方針の策定
- 経営者のコミットメントを明確にする
- 組織としてのBCPの目的と対象範囲を定める
- 重要業務(コアビジネス)の特定
2. リスク分析・事業影響度分析
- 想定されるリスクの洗い出し(自然災害、感染症、システム障害など)
- 各業務の停止による影響度の評価
- 目標復旧時間(RTO)と目標復旧レベル(RLO)の設定
- 重要な経営資源(人員、設備、システム、取引先など)の把握
3. BCP戦略・対策の検討
- 代替拠点の確保
- バックアップシステムの整備
- サプライチェーンの複線化
- 重要データの保護・バックアップ体制
- 必要な資源の確保(備蓄品、資金など)
4. BCP計画の文書化
- 緊急時の体制と指揮命令系統の明確化
- 従業員の安否確認手順
- 具体的な初動対応手順
- 重要業務の継続・復旧手順
- 社内外とのコミュニケーション計画
5. 教育・訓練の実施
- 全従業員へのBCP教育
- 定期的な避難訓練・安否確認訓練
- シナリオ型訓練やシミュレーション
- 訓練結果の評価と計画の見直し
外せない重要ポイント
1. トップのコミットメント
- 経営者自身がBCPの重要性を理解し、率先して取り組む姿勢を示す
- 必要な経営資源(予算・人員)の確保
2. 実効性の確保
- 机上の空論ではなく、実際に機能する計画であること
- 定期的な訓練と見直しによる継続的な改善
- 従業員が理解しやすい具体的な手順の明確化
3. サプライチェーンの考慮
- 取引先や協力会社との連携
- 代替調達先の確保
- サプライチェーン全体でのリスク評価
4. コミュニケーション計画
- 社内外への情報発信手順の明確化
- 複数の連絡手段の確保
- 利害関係者との連絡体制の整備
5. 定期的な見直しと更新
- 組織変更や事業環境の変化への対応
- 訓練結果を踏まえた改善
- 新たなリスクへの対応
6. PDCAサイクルの確立
- 計画(Plan)→ 実施・運用(Do)→ 点検・評価(Check)→ 見直し・改善(Act)→
の有効循環
これらのポイントを押さえることで、より実効性の高いBCPを策定することができます。また、BCPは一度策定して終わりではなく、継続的な改善が必要な取り組みであることを認識することが重要です。
建設業BCPのポイント
以下は、建設業のBCP策定の重要ポイントを時系列で示したものです。
- 事業継続計画の基本方針策定
- 自社の地域で懸念されている災害の調査と考慮
- 対応体制・指揮命令系統の整備
- 社内連絡体制の整備、連絡手段複数以上の確保
- 災害時対応拠点の明確化
- 代替対応拠点(代替連絡拠点)の準備と参集者想定
- 対応拠点、代替対応拠点に参集する人員と時間の整理
- 建物の耐震性に関する状況把握
- 設備・機器の現状及び対策状況(設備、棚、ロッカー等)
- 重要業務と目標時間の設定
- 代替対応(連絡)拠点使用の合意文書準備と周知
- 代替対応拠点(代替連絡拠点)の役割分担の明確化
- 事業継続の全体手順策定と検証
- 個別業務の手順策定と検証
- 全体手順初期・ケース:就業時間内の場合
- 全体手順初期・ケース:就業時間外=夜間・休日の場合
- 避難・誘導の想定
- 安否確認の手順と連絡手段確定、各社員への周知
- 安否確認の訓練計画及び結果評価
- 安否確認後の行動想定と訓練
- 被害状況把握と二次災害の防止のための準備
- 保有資源、調達先、代替調達先の確保
- 災害発生直後に連絡すべき相手先の確定
- 施工中現場の連絡先リスト整備
- 自社が保有している資源整備と不足分準備
- 備蓄、救出用の準備
- 重要な情報のバックアップ(データ、重要文書・図面など)の現状把握と準備
- 不足事項に対する事前対策の実施計画
- 対策が未決定・実施時期未定の課題・問題点整理
- 平常時の訓練、維持管理及び改善の計画と実施
- 事業継続計画の定期的な点検(維持管理)および改善(見直し)計画と実施
- 不定期の事業継続計画の改善(見直し)計画と実施
- 定期的な点検の実施記録保持
追加検討が望ましい項目
AIさんに追加検討が望ましい項目を伺うと、以下の回答を得ましたので参考になさってください。
建設業特有の初動対応関連
- 建設現場での避難計画と安全確保手順
- 仮設建物・工事現場の保全措置
- 重機・建設機材の緊急時対応手順
- 工事中の構造物の緊急補強手順
地域・行政との連携
- 地域防災計画との整合性確保
- 災害協定に基づく行政対応の手順
- 緊急時の道路啓開作業への対応
- 応急仮設住宅建設への対応体制
サプライチェーン関連
- 建設資材の代替調達ルートの確保
- 協力会社(専門工事業者)との緊急時連携体制
- 資材備蓄計画(特に重要資材)
- 建設機械のレンタル・リース会社との緊急時対応
品質管理・技術継続性
- 緊急時の品質管理体制維持
- 技術者の確保・配置計画
- 施工図面・技術データの保全
- 検査・確認体制の維持
契約・法務関連
- 工期遅延への対応方針
- 契約書上の不可抗力条項の整理
- 発注者との協議手順
- 補償・保険関連の整理
環境・安全衛生
- 環境汚染防止対策
- 危険物・有害物質の管理手順
- 労働安全衛生管理の継続体制
- 産業廃棄物の適正処理継続
復旧・復興対応
- インフラ復旧工事への対応体制
- 復興需要への対応計画
- 応急復旧工事の優先順位付け
- 地域復興への貢献計画
情報システム関連
- CAD/BIMデータのバックアップ
- 工事管理システムの代替運用
- 施工図面・技術文書の電子保管
- リモートワーク環境の整備
これらの項目を既存の33項目に適切に組み込むことで、より建設業に特化した実効性の高いBCPとなると指導されました。余力のある会社さんは取り組んでみてください。
BCPの重要性は3つの本質的な理由
BCPの重要性は3つの本質的な理由に集約されます。
- 企業存続の確保
突発的な危機発生時でも、重要な事業を継続または早期に復旧させることで、企業の存続と雇用を守ります。 - 社会的責任の遂行
特に建設業は社会インフラを支える重要な役割を担っており、災害時の復旧・復興においても中核的な役割が期待されています。 - ステークホルダーとの信頼関係維持
顧客、取引先、従業員、地域社会との信頼関係を維持し、企業価値を守ります。
これらの要素は相互に関連しており、企業の持続的な発展に不可欠です。BCP構築と運用にチャレンジしていただきまいと考えています。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません