労働時間と残業時間の納得いく定義、そして就業規則記載例

2020年1月21日

労働時間と残業時間の経営側から納得のいく定義、そして就業規則記載例を披露

労働時間と残業時間を明確にして就業規則に記載を

 日本の民法における三原則の中に「私的自治の原則」があります。
 これは当事者同士の取り決めが一番大切ですよ、との意であり、就業規則も労働の約款であることを鑑みれば、使用者と労働者で約束事をきちんと明確にしておきたいものです。

 そもそも労働基準法は、労働条件の最低基準を示しており、労働基準法が定めていない現実の運用条件は様々あるわけです。それを自社の姿勢として明確にすることは、とても大切なことだと考えています。

 当社でも、勤務時間中にとにかく真面目に執務して成果を出す社員と、成果に至らず、労働ではない喫煙時間などを比較的多く過ごしている社員がおり、その真面目な社員がバカを見ないように、就業規則に下部に示す条文を追加しました。

 経営者から、労働について苦々しく質問されることも多々ありますので、「労働時間」と「残業時間」についての定義をまとめ、就業規則への記載例をご披露いたします。

労働の定義

 労働とは、自ら自身の行為によって、周囲との関係を統制し、価値ある対象を形成する過程だということです。言い換えれば、労働は収入を得る目的で、身体や知能を使って働き、生産活動に寄与することです。

 給与の源泉はお客さまからいただく報酬であり、自組織で産み出す付加価値としての対価です。従って、顧客要求事項や要望を良く捉え、標準的手法をもって標準時間で成果物を生み出す活動が労働と言えます。
 お客さまから1万円いただくのに、2万円の時間(コスト)をかけてしまったのでは、その仕事は受けないほうが幸せでしょう。

 生産活動や付加価値、すなわち利益貢献に役立たない動きは、それは労働とは呼べないのです。生産効率は非常に重要であり、掛け算を知っていれば、432×50を瞬時に計算できますが、掛け算を知らなければ432を50回も足すことになってしまいます。しかも間違える確率を上げてです。

 早い正確な手法を確実に実施できることが労働生産性アップに重要であり、労働していることだと言えます。

労働時間の定義

 よって労働していない時間、すなわち業務に関係ないことをダラダラと話したり、ミスのリカバリーなどのロス時間、技量が未熟なために余計にかかってしまう時間、知らないがために調査している時間、まして教わっている時間などは、本来は労働と呼べず、何の付加価値創出・生産活動に寄与していないことを強く自覚すべきでしょう。

 まとめると、労働時間とは、「標準的手法をもって標準時間で成果物を生み出し、利益・付加価値創出に寄与している時間」です。あるいは「生産効率アップに資するためのアイデア創出の時間」であり、必ずや結果・成果につながる時間のことです。

 これは時間や場所を当然に超越するものでもあります。会社にいる時間や、タイムカードに記録されている時間が労働では決して無いことは経営者の皆さんは主張したい点でしょう。

残業時間の定義

 残業時間は、会社で定める所定労働時間では通常終了しない業務量をこなす時に生じる事象であり、また割高コストがかかることを肝に銘じるべきです。
 レストランを例にイメージしてみます。注文しない料理が突然出てきて、当たり前のように請求されたら、どのように感じるでしょうか。それは本来あってはいけないことなのは火を見るより明らかです。

 ところが労働の場面では、そういうことがなぜか平気で行われているわけです。仕事が遅い人間に限ってそんなところがあります。頼みもしない、必要性も無い残業を勝手にして、なぜか残業代をもらうのが当たり前のようなことです。
 通常であれば所定労働時間内に終わるのに、自分のスキルが無い、処理スピードが無いがために、総労働時間がかかっていまい、あるいはミスリカバリーに時間をかけ、結果残業となるということです。

 顧客との関係では、業務は基本、請負です。顧客に完成物を引き渡して報酬となります。
 ところが仕事の遅い人間にかかってしまうと、処理スピードが遅かったり、やたらやり直したり手戻りしたりして、余計なコストがかかってしまうのです。請負であれば、早く正確に完成させることが正義であり、これが雇用の場面では何故か労働時間正義論がまかり通り、おかしいと感じている経営者の声を多数伺いました。

 かかる事情を考慮すると、残業は「申請・承認制」あるいは「上長からの指示・依頼に基づく」ことが本来の筋ではないでしょうか。
 残業にあっては、所定の「残業申請書」で承認を得ることを大原則とすべきであり、当該の申請をしていない、あるいは上長の承認を得ていない時間外労働は残業と認定しないことが望ましいと考えます。

 また、所定労働時間を会社にいたとしても、期待する成果物ができていない、あるいは進展が無い場合は、労働時間から控除することも大切な躾だと思います。

労働時間と残業時間の就業規則記載例

 上記のロジックから、当社では約束事を明確にするため、「労働時間と残業時間の定義」を就業規則に明記しました。以下、画像として貼っておきますので、参考になれば幸いです。

労働時間と残業時間の就業規則記載例

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