GLOBOTICS~グローバル化+ロボット化がもたらす大激変

2020年1月19日

GLOBOTICS~グローバル化+ロボット化がもたらす大激変

「GLOBOTICS(グロボティクス)」とは

 「グローバル化」は従来、モノづくりに携わる人たちの問題でした。中国からコンテナ船で運ばれてくる安価な製品との競争を余儀なくされていたからです。
 一方、サービスはコンテナ船で運ぶことができないので、サービス職や専門職のほとんどはグローバル化による影響を免れてきたといえるでしょう。

 しかし、デジタル技術がこの現実を急速に変えつつあります。

 今、AI(人工知能)やロボットが、世界的な規模で経済、ビジネスを急速に変えているそうです。「GLOBOTICS~グローバル化+ロボット化がもたらす大激変」は、こうした技術の進化とグローバル化がもたらす、破壊的変動について解説されている書籍です。

遠隔移民

 機械翻訳の進化、ビデオ会議システムなど通信技術の向上により、インターネットに接続可能で、スキルさえあれば、誰でも欧米のオフィスとつながり、仕事ができるようになっています。

 中国では年間800万人もの大卒者が生まれていますが、その多くは国内では仕事がないか、安い給与しかもらえません。しかし、機械翻訳ソフトを使って「そこそこの英語」が話せれば、遠隔地にいながら豊かな国の仕事ができるようになりました。

 こうした「テレマイグランツ(遠隔移民)」が、欧米をはじめとする高賃金国のミドルクラスの雇用を奪いつつあるそうです。そしてサービス・セクターの労働者は、同時に、人工知能(AI)との競争にも直面しています。

ホワイトカラー・ロボット

 Amelia(アメリア)は、スウェーデンの銀行SEBのオンラインと電話の相談窓口や、ロンドンやチューリッヒのUBS銀行で働いているそうです。しかも、300ページのマニュアルを30秒で暗記し、20カ国語を話し、数千本の通話を同時に処理できるというから驚きです。

 Ameliaは、いわゆる「ホワイトカラー・ロボット」です。

 この状況を直視すれば、問題の本質が見えてきます。それは思考するコンピューターとの賃金ゼロの競争です。
 Amelia型の人工知能ロボットは、労働者に取って代わることを目的に設計されているそうです。

 こうした新たな形態のグローバル化と、新たな形態のロボット化(ロボティクス)の組み合わせを、「グロボティクス」と呼び、書籍の中で話が展開されていきます。今日、このグロボティクスが、世界を激変させつつあるそうです。

 遠隔移民とグロボティクス転換グロボティクスは、サービス分野で働く人々に影響を与えています。就業者の大半をサービス分野で働く人々が占めている現在、これは大問題となることでしょう。

遠隔移民との国際的な賃金競争

 遠隔移民は、先進国の会社の仕事を自国並みの賃金でやります。その賃金は、たいてい極めて低い水準です。例えば、中国の会計士の所得水準は、米国の会計士の約20分の1だそうです。

 中国の会計士は米国の会計士の業務を全部できるわけではありませんが、それでも20分の1のコストなら、米国人会計士から何がしかの業務を奪うことはありえます。

 米国企業は、自国の会計士を10人雇う代わりに、米国人7人、海外の在宅アシスタントを7人雇えば、コストを大幅に下げながら同じ仕事量をこなすことができるようになるわけです。

 コンピューター・プログラマー、エンジニアなどでも、同じようなコスト節減が可能なことは容易に想像がつきます。

オンラインのマッチメーキング・プラットフォーム

 遠隔地にいる外国人労働者(リモート・ワーカー)を採用するのは、小さな会社だけではないそうです。大企業も高く評価しているようです。

 例えば、アメリカン・エキスプレスは多くの仕事を海外のフリーランサーに任せています。フリーランスのマッチングサイトには、多くの大企業が人材募集広告を出しています。こうしたプラットフォームのおかげで、海外のフリーランサーを発掘し、採用し、管理するのことが、とても簡単になっています。

遠隔移民のための通信技術

 「タブレット端末を置いて、軽量の眼鏡をかけると、室内ががらりと変わる。左手にはニューヨークの同僚、右手にはアトランタにいるCEO…。実際にそこにいるかのようなので驚かされる」
 これは、ある企業のイギリス責任者が描く未来のビジョンだそうです。

 ビデオ・ゲームの世界に革命をもたらしてきた技術が、在宅勤務の世界に革命的な影響を及ぼそうとしています。カギとなるのは、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)という2つの技術です。

 スタートアップ企業もIBMのような大企業も、ARやVRを使って遠隔地にいる外国人労働者とうまく仕事ができるような「遠隔協働ソフト」を改善しようとしのぎを削っているのです。

実験的な通信技術

 VRなどによるコミュニケーションの次の段階は、「ホログラフィック・テレプレゼンス」です。リアルタイムで3Dの映像(音声も)を映し出し、遠隔地の人がすぐ隣にいるかのように感じられる技術ですが、これは現実になりつつあります。

 2017年、フランスの大統領選挙で、ある候補者はホログラフィック・プロジェクションを使って、リヨンとマルセイユで同時に演説を行いました。マイクロソフトをはじめ、シスコシステムズやグーグルは、ホログラフィック・テレプレゼンスを今後、数年で主流にしようとしています。

自動化とグロボティクス転換

 ホワイトカラー・ロボットには、中小企業にも手が届く簡易版があります。「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)」ソフトがそれですが、耳にしたこともあるでしょう。当社も導入を2年近く前から強く検討しています。

RPAがもたらす末端業務での競争

 RPA大手のブルー・プリズムの会長は、「RPAは人間の真似をする」と言います。それらは「同僚と同じ作業の進め方を知っている自動化人間」として設計されています。それゆえ同社は、RPAプログラムをソフトウェアではなく「ロボット」と呼んでいます。

 このタイプのAIが目指すのは、金融、会計、サプライチェーン管理、カスタマーサービス、人事部門などのバックオフィスの業務削減です。使い方は簡単で、コストが比較的安いRPAの導入は、ブームになっています。

 あるコンサルタント会社は、世界全体でRPAが2020年までに年60%のペースで伸びると予測しています。

高機能のホワイトカラー・ロボット

 先述したホワイトカラー・ロボットのAmeliaは、サービス・セクターのロボットとして生産性が驚異的に高いだけでなく、実際よく出来ているそうです。

 Ameliaの開発メーカーは、Ameliaのアルゴリズムに心理学的なモジュールを加えました。そのためAmeliaは、話している相手の心理状態を読み取り、それに応じて回答や表情を変えて、より良いコミュニケーションをとることができるそうです。驚きですね。

 Ameliaは世界の大手銀行、保険会社、通信企業など20社以上で活用されているそうです。そしてAmeliaのようなソフトを投入する企業が相次いでいます。

 IBMはWatson(ワトソン)のブランド名で、Ameliaのような仮想アシスタントを数多く販売しています。
 こうした高機能のホワイトカラー・ロボットは、RPAなどのAIシステムの「従者」を従え、サービス・セクターの仕事の多くを代替することになるでしょう。

グロボティクスによる破壊的変動

 ビル・ゲイツは、デジタル技術が破壊的な変動を引き起こすのではないかと心配しています。雇用喪失のペースは速すぎて経済は吸収できない、とゲイツは見ているのです。

 電気自動車テスラのCEOイーロン・マスクもこう発言しています。「大量失業をどうするか。これが今後、大きな社会問題になるだろう」と。

 アマゾンのCEOジェフ・ベゾスも、今は亡きスティーブン・ホーキング博士も同様のようです。こうした人たちは、グロボティクスの脅威を見抜いていたわけです。
 グロボティクスによって数億人にのぼる先進国の人々が転職を余儀なくされる時、経済、社会、政治は混乱することは必至でしょう。

スピードのミスマッチによる破壊的変動

 グロボティクスによる破壊的変動は、今、まさに起きています。問題は、雇用破壊と雇用創出のスピードのミスマッチにあります。
 デジタル技術は猛烈なペースで大量の雇用を破壊していますが、大量の雇用創出にはほとんど寄与していません。

 今日のIT起業家は、高コストの労働者を低コストの海外フリーランサーやホワイトカラー・ロボットに置き換え、巨万の富を得ているそうです。
 それが彼らのビジネスモデル「高所得国の労働者を代替してコストを節減する」というビジネスモデルです。

雇用破壊がビジネスモデル

 ホワイトカラー・ロボットの大手メーカー、ブルー・プリズムの宣伝文句を見ると、「多機能ソフトウェア・ロボットは、デジタル・レイバーとして企業のバックオフィス業務に導入され、手作業でのデータ入力と処理という著しくリターンが低く、リスクが高く、人がやるべきではない作業をなくします」と、謳われています。

 こうしたソリューションは、すでに銀行、通信、エネルギー、政府機関、小売り、ヘルスケア業界のバックオフィス業務の自動化に導入されています。ここで留意すべき最大のポイントは、グーグルやIBMなど大手IT企業の精鋭は、雇用創出に取り組んでいるわけではないということです。

 彼らが取り組んでいるのは、雇用を不要にすることだと捉えられます。

グロボティクス時代に備える

 では、私たちはグロボティクス時代にいかに備えるべきなのでしょう。

古いルールはもはや通用しない

 経済の転換が起きるたび、チャンスを捉えた者には勝利が、捉えられなかった者には悲劇が待っています。何より重要なのは、備えです。
 将来に備えるには、AIと遠隔知能(RI:リモート・インテリジェンス)の能力を分析し、AIもRIも強くない分野で人間の強みを磨くことに注力することです。

 ここからグロボティクス時代に活躍するための、第1の鉄則が導き出せます。
 それは「古いルールは通用しない」ことです。

 よく知られる古いルールといえば、「スキルを身につけ、教育を受け、訓練を積み、経験を重ねるほど成功する」でしょう。
 この格言は、子供の将来を心配する多くの親たちの考えでした。

 古いルールが通用したのは、高度なスキルを身につけ、高い教育を受けるほど、サービス・セクターで仕事を得られる可能性が高まったからです。しかしながら、もはやこのルールは通用しなくなっています。多くの労働者は、ホワイトカラー・ロボットや海外在住の優秀な労働者との競争にさらされるのは避けられません。

 グロボットは、国民の75%が生計を立てているサービス・セクターの雇用を脅かします。この脅威に備えるには、違う考え方が必要になります。

グロボット時代に繁栄を築くための3つのルール

 グロボティクス革命に備える上で、助けになるルールが3つあるそうです。

  • 第1に、ホワイトカラー・ロボット(AI)や遠隔移民と直接競争しない仕事を探す。
  • 第2に、AIや遠隔移民との直接競争を避けられるスキルを磨く。
  • 第3に、人間らしさはハンデではなく、強みだと心得る。

 経済的に成功するには、20世紀には優れた頭脳が重要でしたが、将来はこれと同じくらい「温かい心」が重要になるかもしれません。
 身につけるべきスキルは、直接会う必要のある生身の人間との付き合いを良くするようなスキルと説かれていました。遠隔移民にはできないことということが、その理由です。

 能力向上のための訓練という観点では、チームワーク、創造力、社会的認知能力、共感性、倫理感といったソフト・スキルを養うことに投資すべきだそうです。
 グロボットはこれらが苦手なので、今後、仕事上で求められるスキルになります。

 公の議論で見落とされがちなのは、グロボティクス転換で勝ち残る人の多くは、グロボットを「設計する」のではなく、グロボットを「使いこなす」人たちだ、ということです。

 グロボットに代替されたくないなら、仕事の中でグロボットを使いこなす方法を学ばなければなりません。
 例えば、いまや駆け出しの弁護士はホワイトカラー・ロボットと競争していますが、最新テクノロジーを使いこなせるなら弁護士として活躍できる可能性があり、使いこなせない者は、他の仕事を探すしかないと主張されていました。

 人間が人間らしく、そして進化が目まぐるしいグロボットと共生し、自らの価値を守り高めながら生存競争を勝ち抜くために、とても示唆に富んだ書籍でした。

書籍案内

GLOBOTICS~グローバル化+ロボット化がもたらす大激変

  • リチャード・ボールドウィン氏 著、高遠裕子氏 訳
  • 日本経済新聞出版社
  • 2019年11月15日発行/375頁
  • 2,200円+税

主要目次

  • 1章 はじめに
  • Ⅰ部 歴史の転換、激変、反動、解決
  • 2章 大転換:我々は過去にも経験している
  • 3章 第二の大転換:モノから思考へ
  • Ⅱ部 グロボティクス転換
  • 4章 グロボティクスを牽引するデジタル技術の衝撃
  • 5章 遠隔移民とグロボティクス転換
  • 6章 自動化とグロボティクス転換
  • 7章 グロボティクスによる破壊的変動
  •  他3章

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