増加の一途をたどる過重労働による脳・心臓疾患、精神疾患に関する労災請求

2020年1月27日

平成28年度「過労死等の労災補償状況」

 厚生労働省は、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害に関して、平成14年から、労災の請求件数や支給決定件数などを年1回取りまとめています。
 このたび平成28年度の集計結果が公表されましたので、その内容をまとめます。

脳・心臓疾患に関する労災補償状況

 請求件数は825件で、前年より30件増加しました。支給決定件数は260件で前年比9件増、うち死亡件数も同11件増の107件でした。

 業種別に見てみると、請求件数・支給決定件数ともに「運送業、郵便業」が212件と最も多く、次いで「卸売業、小売業」106件、「製造業」101件と続きます。

 年齢別では、「50~59歳」が請求件数266件、支給決定件数99件とともに一番多く、「40~49歳」が請求件数239件、支給決定件数90件と、ともに2番目に多くなっています。

 時間外労働時間別の支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」が106件で最多、「100時間以上」の合計件数は128件ありました。

精神障害に関する労災補償状況

 精神障害の請求件数は、前年から71件増え1,586件と、過去最多となりました。そのうち未遂を含む自殺件数は前年から1件減の198件でした。支給決定件数は498 件で前年から26件増加し、うち未遂を含む自殺の件数は前年から9件減の84件となっています。

 業種別で見ると、請求件数は 「医療、福祉」302件、「製造業」279件、「卸売業、小売業」220件の順に多く、支給決定件数は「製造業」91件、「医療、福祉」80件、「卸売業、小売業」57件の順になっています。

 年齢別では、「40~49歳」歳の請求件数が542件、支給決定件数が144件とともに最も多く、次いで「30~39歳」の請求件数が408件、支給決定件数136件という順に多くなっています。

 そして、出来事別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が63件となっています。

裁量労働制対象者に係る支給決定件数

 過去6年間で、「裁量労働制対象者」に係る脳・心臓疾患の支給決定件数は22件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が21件、企画業務型裁量労働制対象者に係る支給決定が1件ありました。

 企業側は、事業場の事故に限らず、労働時間・働き方等の管理に厳重な配慮が必要です。

<出典:日本法令 http://www.horei.co.jp/>