「労働者派遣事業者」の許可基準を実質緩和へ

2020年1月27日

◆「資産要件」を緩和へ

 厚生労働省は、労働者派遣事業者の許可基準を緩和する方針を固め、改正案を公表しました。

 現在は、許可申請事業主に関する財産的基礎として、純資産等で一定の要件を設けていますが、地方公共団体が事業者の債務を保証することなどを条件として、実質的に資産要件を撤廃します。

 労働者派遣法に基づく許可基準を改め、9月上旬にも適用する方針です。

◆現行は「資産要件2,000万円」

 現行の許可基準では、派遣労働者に対する賃金支払いを担保するため、許可申請事業主に対して、次の要件が課されています。

  1. 「資産の総額から負債の総額を控除した額が2,000万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること」
  2. 「基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること」
  3. 「事業資金としての自己名義の現金・預金の額が事業所数に1,500万円をかけた金額を上回ること」

地方公共団体の保障で要件を担保

 今回示された改正案では、地方公共団体が企業と債務保証や損失補填の契約を結ぶことを条件に、これらの要件を満たさなくても事業をすることを許可するとしています。

 地方公共団体との債務保証契約や損失補てん契約が存在することで、資産要件を満たしている場合と同じ程度の評価ができると判断するものです。

 資産要件の基準そのものは引き下げず、労働者への賃金支払いが滞らないようにします。

2015年改正による基準を、実態を踏まえ緩和

 2015年の労働者派遣法改正で、それまで資産要件を満たす必要がある許可制の事業者と、資産要件のない届出制の事業者の2種類あった事業者の区分が、許可制に統一されていました。

 事業者は来年9月までに許可制に移行する必要がありますが、今年7月現在で、許可制の事業所数が約2万4,000件あるのに対し、届出制は約5万5,000件と移行は順調に進んでおらず、「資産要件のハードルが高い」といった指摘も寄せられていました。

 今回の基準改正で移行を促し、経営規模の小さい事業者でも派遣業を続けられる環境を整えて、地方で働く人などが仕事を見つけやすくするねらいです。

<出典:日本法令 http://www.horei.co.jp/>