「超」文章法~伝えたいことをどう書くか~

「超」文章法~伝えたいことをどう書くか~

文章作成の極意は読み手を納得させる「一文」が書けるかどうか

 文章作成の極意は「なるほど!」と読み手を納得させる「一文」が書けるかどうかにかかっているでしょう。

 地位や職種を問わず、相手を説得するための「文」が書けるかどうかは、情報化社会の中で益々重要性を高めていると言えます。
 ベストセラー「『超』整理法」の野口悠紀雄氏が、豊富な執筆経験のもとに、文章作成のコツをまとめた1冊をご紹介します。

「メッセージ」こそ重要

 ここで述べている文章とは、報告文、企画書、解説文などのビジネスに使える「論述文」です。
 このジャンルの文章の目的は、小説のように読者を感動させることではありません。
 読み手をいかに説得し、自分の主張を広めていくかです。

 そのためには、内容が有益で、読み手が興味をもって読み始めるものでないといけません。
 さらに言うと、理解しやすいものでないと意味がありません。

どうしても伝えたい「メッセージ」があるか

 文章を書く上で最も重要な出発点は、メッセージを明確にする、つまり「読み手にどうしても伝えたい」内容を明確化することです。

  • 「仕事を効率的に進めるためには、書類の整理をうまく行う必要がある」
  • 「書類は、内容別に分類するのでなく、時間順に並べるのがよい」

 前者は、メッセージになっておらず、主張でもないし、発見でもなく、ただ当たり前のことを確認しただけの文章となっているのに対して、後者には、明快な主張「メッセージ」があります。

うまい「メッセージ」が見いだせれば成功

 伝えたい文が成功するか否かは、9割以上、適切な「メッセージ」を見いだせたかどうかです。うまい「メッセージ」さえ見いだせれば、ほぼ成功間違いなしと言えるのではないでしょうか。

ひとことで言えるか?で判断

 では、自分の書きたいことが「メッセージ」といえるかどうかは、どのように判断できるのでしょうか?

 第1の条件は、「ひとことで言えること」です。
 これこそが最も重要な条件なのです。

 文章を書いても「それで、君の言いたいことは、要するにどういうことか?ひとことで言えば何だ?」と問われるようでは、適切なメッセージを捉えていない、ということになります。

書きたくてたまらないか?

 適切なメッセージが見つかれば、「どうしても書きたい」と考えるようになります。
 これが、自分の書きたいことが「メッセージ」といえるための第2の条件です。

ピントを合わせる

 文章を書く作業は、見たまま、感じたままを書くことではありません。見たこと、感じたこと、考えていることの大部分を切り捨て、書くに値するものだけをその中から抽出することなのです。

 「電車はいつも混んでいる。新聞も読めない。何とかならないものか」

 確かに主張にはなっていますが、これは誰もが感じていることで、面白くもないし、ためにもならな文です。つまり、ピントが合っていないのです。

「ピントが合う」とは

 「満員の通勤電車を有意義に過ごす方法 ― 録音テープで英語の勉強をするには、通勤電車は最適の環境だ。他にすることがないから集中できる。」

 こんなアイディアを見いだしたのなら、それは書く価値があるし、誰もが面白いと思うメッセージになっているのです。つまり、このようにピントを合わせていくのです。

骨組みを作る

 メッセージを分かりやすく伝えるためには、物語同様、ストーリー展開が必要です。どのような論点を、どんな設定で、どう提示するかの「骨組み」作りが重要です。

文章は3部構成を意識する

 文章の構成について、昔から「起承転結」ということが言われてきましたが、これはもともとは漢詩の形式ですね。
 通常、文章作成の場合は、これに従う必要はありません。むしろ、「転」のところで別の話題が現れることによって、読み手は当惑してしまいます。

 そこで、原則的には、序論・本論・結論という3部構成での文章作成がお勧めです。

序論・本論・結論

1.序論:「何が問題か」を述べる。

 なぜこの問題を取り上げたのか、問題の背景は何か、の説明。

2.本論:分析と推論の展開。

 仮説を提示し、それをデータによって検証していくという形。

3.結論:結論をきちんと述べる。

 スペースが許せば、結論の含意、未解決の問題などについて述べる。

脱兎文

 原則的な3部構成法でも、序論で悠長に背景を述べていると、読者が逃げてしまう問題点があります。
 これを防ぐ方法は、最初に結論やクライマックスを述べてしまうことです。

 脱兎文とは「脱兎のごとく核心に至る」という意味で、新聞などでは、事件の主要部分を最初に書かれ、次に詳細や背景が書かれているのがこれに当たります。

終わりも大切

 読み手は忙しい人なので、最初と結論だけを見るものであると心得ていて間違いないと言えます。ですから、結論部分に答えが書いていないと、捨てられる可能性があります。
 後ろから読まれることも想定しておくのが、謙虚な著者の態度と言えます。

より説得力のある文章に

 よりわかりやすく説明し、印象的に伝えるためには、「比喩、具体例、引用」の3つの方法を用いるべきです。

1.比喩

 「構造改革とは手術のようなものだ。これに対して景気対策は、熱さましでしかない」
 のように、比喩には、内容をいちいち説明せずに、「一撃のもとに」仕留めてしまう簡潔さと強力さがあります。

2.具体例

 「景気対策としては、減税、公共事業の追加、金融緩和などがあり、構造改革としては、間接金融から直接金融への金融構造の転換などがある」
 このように具体例を挙げるとより分かりやすくなります。

3.引用

 「私はこう考える」と言うより、「ゲーテがこう言った」の方がありがたみがあります。
 引用とは、簡単にいえば、権威に頼ることで評判を勝ち取ることができる手法です。

ドラマチックに始め、印象深く終える

 スピード重視の加速するデジタル社会では、その「文章」がビジネスの成否を分けると言っても過言ではありません。著者の「ドラマッチックに始め、印象深く終えよ」といった教訓は、文章を書く際に常に意識しておきたいポイントです。

 ビジネスの成功に直結する読み手を惹きつけて離さない「文章」の極意が満載の「超」シリーズの一作です。

書籍案内

  • 「超」文章法 ~伝えたいことをどう書くか~
  • 野口悠紀雄 著
  • 中央公論新社(中公新書)
  • 2002年10月25日発行/265頁
  • 780 円+税

主要目次

  • 1章 メッセージこそ重要だ
  • 2章 骨組みを作る( 1 ) ―― 内容面のプロット
  • 3章 骨組みを作る( 2 ) ―― 形式面の構成
  • 4章 筋力増強 ―― 説得力を強める
  • 5章 化粧する( 1 ) ―― わかりにくい文章と闘う
  • 6章 化粧する( 2 ) ―― 100回でも推敲する
  • 7章 始めればできる

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