「転勤ルール」の整備はお済みですか? ~働き方改革時代の転勤とは?~

2020年1月27日

働き方改革時代の転勤とは

「ノー転勤」社員が増えている

 昨年、JILPTは「企業における転勤の実態に関する調査」を行いました。これによると、61.2%の企業が「正社員(総合職)の転勤の可能性がある」と回答しています。
 同調査結果で特に興味深いのは、この「転勤がある企業」において、過去3年間で転勤配慮の要望が「増えた」という回答は、男性社員で18.2%、女性社員で11.7%と、いずれも「減った」を大きく上回っている点です。
 従業員が転勤に難色を示すのはいつの時代も同じですが、今どきの従業員は、声を上げて「ノー」と言う傾向にあります。

政府も転勤ルールを整備中

 政府も現在、転勤に関する雇用管理ルールの整備・検討を進めています。
 いわゆる“働き方改革”の大きな柱にワーク・ライフバランスがありますが、転勤は、単身赴任や配偶者の転職をともなったり、育児・介護を困難なものにしたりと、ワーク・ライフバランスを大きく損なってしまうものとして、政府からも問題視されているのです。

簡単に転勤を命じられない時代

 もちろん企業には法律上、配転命令権が認められています(ただし濫用は禁止されています)。事業所間の人員調整、ジョブローテーションによる人材育成など、転勤が必要な事情もあるでしょう。
 しかし、今や転勤は会社が必ずしも自由に命じることができるものではなく、自社従業員や政府から「配慮」を求められてしまうご時世だということは、認識しておくべきです。

転勤にまつわるトラブルを防ぐために

 転勤における「配慮」としてもっともわかりやすいのは、賃金を上乗せすることでしょう。
 リクルートワークス研究所『Works No.134』によると、転勤による賃金の割増率は、例えば野村證券では10~15%、モスストアカンパニーでは10%であり、概ね10~20%の割増賃金を支払えば、多くの人が納得しやすい水準とのことです。
 ただ、賃金はほんの一例です。勤務時間、業務内容、転勤後の社内キャリアといった処遇について、社内ルールの未整備により、転勤対象者とそうでない従業員(地域限定社員やパートタイマーなど)の双方に不公平感があると、転勤濫用を疑われたり、転勤を理由とする離職につながったりしかねません。
 転勤ルール(社内規程、賃金制度等)をきちんと整備して、従業員に周知しましょう。