中村紀洋氏「阪神若手育成停滞理由」に学ぶ競争原理大切さ

2020年1月23日

中村紀洋氏の「阪神若手育成停滞の理由」に学ぶ競争原理

成果・結果にとことん拘り徹底した組織内競争が大切

 ノリこと元いてまえ打線の中核だった中村紀洋氏が「阪神の若手育成停滞の理由」について言及した記事が、とても合点のいくものであり、学ぶべきことがあったので、引用して掲載させていただきます。
 課題を強く意識した練習で課題を克服し、徹底した組織内競争が大切であると述べています。成果・結果にとことん拘るとも読めるわけです。

 そもそも、プロという超厳しい世界を生き抜くためには、壮絶な努力を継続する必要があるのだと思います。
 プロとは、何も野球の世界だけではありません。お金をいただく以上、全ての世界がプロ魂を持たなければいけないのだと思います。労働基準法が定める所定労働時間が独り歩きし、おかしなことになっていると感じている方は少ないと想像します。

 労働時間とは、顧客に対してサービスを提供している時間であり、教えてもらっている時間とか、失敗して手戻りにかけている時間は決して労働時間とは呼べないのでは無いでしょうか。

 仕事は成果物の引き渡しが大原則であり、成果や結果につながらない時間は、きっと「誰も幸せになりえないムダな時間」なのだと思います。「働き方改革関連法案」が施行を控える今、敢えて引用した記事の内容を強く肝に銘じたいものです。

中村紀洋氏が語る「最下位阪神の若手育成停滞の理由」

THEPAGE10/9(火)配信

 就任3年目の金本監督は17年ぶりの最下位監督となった。なぜ阪神の若手育成は停滞したのか。

 近鉄、ドジャース、中日、楽天など日米6球団でプレー、現在は、西宮市内に立ち上げた「N’smethod」で子供達を教えて、高校の特別コーチとしても浜松開誠館高校を指導、12月には「中村紀洋杯中学硬式野球大会」を主催している中村紀洋氏(45)に意見を聞いた。

課題である若手育成に苦悩している理由とは?

 中村氏は、阪神の若手が育ってこない最大の理由の一つにチーム内競争の欠如を指摘した。

 「若手が激しい競争の中から自分の力でレギュラーを勝ち取る、というものが見えませんでした。福留、糸井、鳥谷と3人のベテランが阪神にはいますが、鳥谷は、若手との競争に負けてポジションを明け渡しましたか?ポジションを空けて、与えるということをやるとチームは弱体化するんです。阪神は、その典型。外から見ていてもわかります。そこじゃないですか?若手が育ってこない最大の理由は」

 金本監督は、就任2年目に「鳥谷と北條を競争させる」と言ってキャンプインしたが、本格的なオープン戦が始まる前の段階で、北條にショートのポジションを与えて鳥谷は三塁へコンバートされた。だが、北條は打率.210と低迷して結果が出せず鳥谷は三塁でゴールデングラブ賞を取った。
 今シーズンも2年目の大山を使いたい金本監督は、キャンプで、早々に鳥谷に二塁へのコンバートを指令、三塁を大山に与えた。しかも、開幕戦は1番「高山」、2番「鳥谷」で臨んで巨人のエース、菅野智之を攻略したが、翌日の第2戦で巨人が左腕、田口麗斗を立てると、1番「俊介」、2番「上本」と打順を替えて鳥谷を外した。

 「近鉄時代に僕も経験しましたが、競争がないままベテランを外して若手を使うような起用法を用いるとチームは低迷するんです。若い選手にポジションを与えると、ほどほどにはやりますが、ズバ抜けてはこない。そこで満足してしまうんですね。競って競って、結果で、そのポジションを奪い取った場合は『自分の力で勝った』という自信が生まれます。競争で奪い取ったポジションはレギュラーに定着します」

 近鉄時代に中村氏が、入団3年目にレギュラーに定着するきっかけとなったのは、当時三塁のレギュラーだった金村義明氏が故障して代役出場の機会をもらったことだった。

 「レギュラークラスが怪我をしたときに、そこにぐっと入り込むのが、ひとつのチャンスですよね。プロとしての向上心、意識というものが重要で、僕も近鉄の若い頃には、ベンチから見ていて決して口や態度には出しませんが内心『デッドボールでも当たってくれないかな』『故障でもしてくれないかな』と考えていたものです。それくらいの気構えでいるのがプロ。そうでないと弱肉強食の世界では生き残れません。チームに本当の競争というものが生まれてこないんです」

 日米6球団を渡り歩き、戦力外通告を受けても復活、通算2000本安打、400本塁打の偉業を成し遂げ、優勝、日本一にも貢献してきた中村氏だからこそ、実体験として語れる意見だ。さらに中村氏は、阪神とは対照的に生え抜きの若手が育ちチームを優勝へ導いた広島、西武との違いに「練習のあり方があるのではないか?」との疑問を投げかける。

生え抜きの若手が育つ広島、西武と阪神との差はどこに?

 「生え抜きの若手が育ち爆発的な打線を作ってリーグ制覇した広島、西武と阪神との差には、いくつか理由があると考えます。ひとつは練習の差。実際、練習を見比べて見たわけではないので、あくまでも試合を見て感じる僕の客観的な感想であることを理解してもらいたいのですが、大山にしてもそうです。後半になってポテンシャルの一部を見せましたが、そこまでは自分のバッティングに迷っているように感じました。練習をしきっていない。本当の自信がないのでしょう。僕が練習の差と指摘するのは何も単純に練習量のことを言っているのではありません。やみくもに『1万回バットを振りました』では意味がないのです。課題をしっかりと自分で理解をして、何本、真剣に振ったか、打ったか、が大事になってきます。量も大事ですが、練習の質も、それ以上に大事なのです」

 阪神の若手、とりわけ大山、中谷、北條らの右打者が伸び悩んだ理由に、右打者出身の打撃コーチがいないこと、1軍では右打ちを指令されること、金本監督の現役時代のバッティング理論が合わないことなどが挙げられている。

 右打ちを意識させられると、どうしても左肩が少し開き、右手で押し込むようなバッティングとなり、体の軸回転の意識が気薄となりヘッドが出てこなくなる。いわゆるボールの前さばきができなくなるのだ。西武の山川穂高や序盤に本塁打を量産した横浜DeNAのロペスらのボールの前さばきと阪神の若手のバッティングを比較してみるとよくわかる。

 阪神は、それらの問題を解消するために来季は、元西武、中日で活躍して最年長2000本安打を記録した和田一浩氏を打撃コーチに招聘する方針だが、中村氏に言わせると、問題は「そこではない」という。

 「僕も金本監督と同じく、後ろ、つまり軸足打法でした。近鉄時代に水谷実雄さんからの指導で徹底された下半身重視の考え方に、落合博満さんの打法を自分で映像などを見ながら盗んだんです。左手首を怪我してから右手を使うバッティングに変わらざるを得なかったのですが、重要なのは、理論ではなく、教えられた理論を本当に自分で理解して練習しているのか、どうかという点。理解して自分で主体的にやっている練習と、やらされている練習では、大きな違いになります。後者では、いくら練習をしても自信にはつながらない。色々と自分で試行錯誤しながら理解すればいいのです。その上で手がズルズルになるまで振るような練習の絶対量が必要で、それを根気強く重ねていけば自信に変わっていきます。おそらくそういうことを各選手ができている典型が広島や西武なんでしょう」

 その意識を植えつけることのできなかったコーチ陣に問題はなかったのだろうか。

コーチはチーム成績に責任を取らねばならない

 中村氏は「コーチが入れ替わり方針がコロコロと変わるようでは選手は伸びません。阪神は若手を育成するという方針を立てているのですから、ぶれずに貫き通すことです。コーチは、関係ありません。やるのは選手。コーチが素晴らしい理論を持って、いい教え方をしていたとしても選手個々が納得してやらない限りコーチはどうしようもありません」という意見だが、「ただ」と条件もつける。

 「では、コーチに選手を納得させるだけの技術、技量があるのか、そして信頼関係を作っているのか、という部分は検証する必要はあるでしょう。僕は外の人間だから、そこはわかりませんが、『大丈夫や。俺を信用しろ』と、自信と信念を持って教えることのできる男気のあるコーチが理想です。プロですから、どの選手にも才能と能力はあります。そこから先は、信じるか、信じないか、で打てるか、打てないかが決まるんです」

 中村氏は、昨年から浜松開誠館高校の野球部で特別コーチを務めているが、今どきの高校生を指導する上で、コミュニケーションと信頼関係を大切にしている。

 「僕の方がちょっとは引き出しは多いよ。ちょっと信用してみたらどう?本音で腹を割って話しようよ」
 そう生徒達に呼びかけると、「腹を割るってなんですか?LINEでOKなんじゃないですか?」と、真剣な顔で返してくることがあって戸惑うという。
「腹を割るっていうことも知らないんですよ。信頼関係は、LINEでは無理。だから、僕はでLINEはなく、ちゃんと目と目を見て話そうよ、という話をしています」

 丁寧に時間をかけて信頼関係を構築して教えたことが結果につながると、生徒の目の色が変わり、さらに「うまくなりたい」との欲が生まれ、一層、信頼関係が深まり、中村氏へ質問を求める機会も増えてくるという。

 プロと高校野球でレベルこそ違えど、教える側からの経験をしてきた中村氏だからこその提言なのだ。

 「来季にチームを改革するとすれば、コーチと選手の関係を整理した上で、練習への取り組み方を改善して、一番重要な競争をもう一度チームに持ち込むことじゃないでしょうか。そして、最終的にはコーチは、今年のチームの成績、順位に責任を取らねばならない。それだけでしょう」

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