助成金・補助金を活用する落とし穴

2020年1月24日

助成金・補助金を活用利用する落とし穴がたくさんあった

額に汗せず簡単にお金がもらえるはずがない

 少し前から、BtoB事業を展開する企業が自社サービスのフロントやフックとして、助成金・補助金の利用をFAX-DM等でけっこうな営業攻勢をかけてきています。
 労働局の方からは「もう少し地元の社労士さん頑張ってよ」と直接には言われませんが、婉曲的にそのような空気感を感じることがあります。
 業者の中には、正攻法ではない、胡散臭いというか、詐欺まがいのところもあるようなので注意が必要です。まあ自分たちの処理力・力量不足も、そうした横行を許す一因でもあるので、反省は必要なのですが。

 で本日探し物をしていて検索エンジンに向いていたら、「助成金 落とし穴」というキーワードが見えたので、思わず記述してみようと思った次第です。

 助成金・補助金は、財務諸表では営業外利益となり、雑収入として収入の部に入ることから「利益100%と同じの資金」なのですが、仕事してもらえる「お金」と、そんな簡単に同じレベルで考えてしまうには、何かが違いすぎるのだと考えています。

 それで、落とし穴というお題で、どんなことを注意しなくてはならないかを、主観的ではありますが記述してまいります。

1.事業の方向性と無関係な助成金へ走る(落とし穴1)

 助成金・補助金は国策です。国や地方自治体が、こういうように世の中を向けていきたいというけん引役を担っています。それが自社の経営戦略と合致していれば何の問題も無いわけです。

 簡単な書類で終わるものも無きにしも非ずですが、基本的には膨大な書類を用意する必要があります。書類・記録はあくまで証拠です。事実の証明です。それを架空の事実で書類だけを作るような話もあるようなので、それは詐欺罪等に該当し、企業運営として一番重要な『信頼』を損ねるので、絶対にやめたほうがいいでしょう。

 落とし穴の1は、事業と無関係な助成金・補助金に走り、意味のない書類を作成することは、本体的業務の足を止めることになりかねませんので、やめたほうがいいと考えています。その時間やコストを本業強化に使うことが正しいと思います。

2.研修や教育に伴う時間の架空計上(落とし穴2)

 助成金の中でも利用しやすいのが、「従業員のキャリアアップやキャリア形成のために研修費等を一部助成する」助成金です。
 リーマンショック後や大震災後に「中小企業緊急雇用安定助成金」なるものがあり、業務ができないので、休業させずに研修を行うと研修費用が助成されるものがありました。今でもあります。そこで架空の時間計上等で新聞にも取り上げられたものがあります。
 これは詐欺ですから、絶対にやめましょう。やばいです。本当に大切な商いの信頼を損ない、ダメージが大き過ぎます。まともに汗をかいたほうが遥かに素敵です。
 これも事業に必要なまともな研修をしっかりやればいいわけで、無理やりこじ付けの必要の無い研修も意味を感じません。まして架空はもってのほかです。

 助成金制度の利用にあたっては社労士が助成金の申請を行うケースが多いと予想しますが、健全と言い難い助成金利用の提案を受けた際は、慎重にその是非を検討する必要があります。

3.時間と手間がかかりすぎ現実的マイナス(落とし穴3)

 助成金・補助金申請は書類が多いです。書類がお金になるので、当然そうなんです。
 管理能力のある企業さんが事業に必要な助成金・補助金を活用しているのであれば、負荷はそうでも無いと想像しますが、書類作成・管理能力の無い組織が申請事務を行おうとすると、莫大な労力がかかることは明らかです。

 その管理力では申請書類を作成する等の手続きするにあたり限界を超えるだろうと想像できることがあります。申請して頑張ってみたら、結果として支給されなかったりすると目も当てられないのですが。
 代理申請も多いのですが、当事者じゃないとわからないことも多々あります。
 時間をそこまで使うなら、その申請はやめて、本来業務に時間を回したほうが良いですね、というケースもありえます。

 物理的に難しいと考えられるような助成金や補助金については、本来業務に支障が出て、実質マイナスということにもなりかねませんの注意が必要です。
 やはり視点は、本来業務強化に必要か否かだと思います。

4.不支給や申請額が減額される(落とし穴4)

 要件に合致しなくて不支給というのが一番切ないのですが、申請金額から減額されるケースもありえることを頭に置いておく必要があります。
 これだと3で述べたことと重複しますが、実質赤字というよりは完全赤字で、その分、営業や商材強化に時間やコストをかけたほうが良かったねとなります。

 当社でもお客様と話しをさせていただいてガッカリすることもあるのですが、世に名だたるコンサル会社が、簡単に助成金・補助金を獲得できるようなことを経営者に伝え、それを聞いた経営者が当社に問い合わせをしてくるようなことがあります。
 悲しい限りなのであり、当社はけっこうお客様には寄り添っているつもりなのですが、こういう安易に助成金。・補助金をもらえるようなお話しだけは、「ぜひ自社で頑張ってください」とう対応になります。

 売上や利益を作る苦労は経営者が一番分かっているのだと考えます。そんな簡単にお金になるのでは、自分たちの仕事が否定されているような気にならないのだろうかと、モラルを疑わざるをえません。

 ここでは、不支給や申請額が減額される落とし穴もあるのだということをご理解いただきたいものです。

5.受給までの期間が長く資金繰に要注意(落とし穴5)

 助成金・補助金の類は受給はできるのですが、先に支出することが大前提です。
 支出した額の1/2支給とか2/3支給などともなっており、まず支出して、それからの支給申請になります。
 重要なことは、実際に支給されるまでの期間が長いということです。

 当社もそうですが、中小企業のキャッシュフローは苦しいものがあります。
 そのタイムラグをきちんと理解しておかないと、資金繰に辛い局面を迎えます。ぜひ資金繰には注意を払ってください。
 助成金や補助金をあてにした経営者の、あの辛そうな資金繰、あまり見たくありません。

 従いまして、何度も申し上げるのですが、助成金・補助金は、自社の本業強化に向かうものをぜひとも選定して、報われる苦労をして欲しいと願います。

助成金・補助金には目的や意図が明確にある

 国会で承認を受けて動き出す公金が助成金・補助金です。そこには明確な意図があります。
 しかし窓口は労働局などの行政になりますが、その話がしっくりこないこともあります。それは意図をかみ砕いていないのではないかと感じるわけです。
 どうしてそうなるのか、まあここでは思うところを記述しないようにしましょう。

 国策としては、組織がこのようになって欲しいという意思をもって決定されているはずですが、実務の窓口は、細かい技術論になることも多く、まあそれも世の中だと思います。

 助成金や補助金は、賢く活用したいものですが、本業の強化、すなわち人材強化、事業のシステマティック化に資するようにお役立ていただき、そして本来業務が強化され、組織が繁栄に向かうことを切に祈ります。

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