曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法

2023年4月7日

曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法

解像度を上げる4つの視点

 「提案をつくってみたが、大事な何かが抜けている気がしていて、モヤモヤが晴れない」
 「言いたいことはわかるけれど、説得力が弱いように感じる」…。

 仕事をする中で、こんな経験をしたことはないでしょうか。カメラのピントがあわず、世界がぼやけて見えるような感覚、とも表現できるでしょうか。
 こうした思考の状態のことを「解像度が低い」というそうです。逆に、明晰な思考ができている状態のことを「解像度が高い」と表現するそうです。

解像度とは何か

 「解像度」という言葉は、印刷や画像などに用いられる言葉だが、昨今、ビジネスでも使われるようになりました。「解像度が高い」「解像度が低い」「解像度が足りない」というふうに使われ、物事への理解度や、物事を表現する時の精細さ、思考の明晰さを示す言葉として用いられています。

解像度が高い人が持っている4つの視点

 解像度の高さは、4つの視点で構成されているそうです。

1.「深さ」の視点

 原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げます。

 例えば、「売上が下がっている」という課題を考える時には、顧客数が減っているのか、単価が下がっているのか、などの課題の原因の深掘りが必要です。つまり、見えているものの奥にある原因や可能性を深く掘り下げて把握することで、解像度を上げることができます。

 深さがなければ、課題を考える時も、何が根本的な問題であるかがわかりません。

2.広さの視点

 考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保します。

 課題を考える時には、広く原因を把握し、異なるアプローチや視点を幅広く検討することで、もともと考えていたのとは別のところにある原因や可能性に気づくことができます。解像度を上げるためには、広く物事を見ていくことも重要です。

3.構造の視点

 「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握します。

 例えば、飲食店の売上が減った原因を調べてほしいと依頼されたとします。その場合、まず売上を「顧客単価×顧客数」に分解し、顧客単価をさらに食事と飲料に分け、さらに食事はコースとアラカルトなど細かく分けていけば、どういった種類の品目の売上が下がっているのかを把握できます。

 こうして売上を構造的に把握することで、課題の根本的な原因を突き止めることができます。

4.時間の視点

 経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉えます。

 「深さ」「広さ」「構造」は、常に時間とともに変わっていきます。時間による変化をきちんとおさえられていないと、解像度が高いとはいえません。

行動する、粘り強く取り組む、型を意識する

行動する、粘り強く取り組む、型を意識する

 では、解像度を上げるためにはどうすればいいのでしょうか?
 ポイントは、次の3点だそうです。

1)行動なくして、解像度は上がらない

 解像度を上げるには、「情報」「思考」「行動」の「量と質」を高めていくことが必要です。

 料理に例えれば、情報は食材であり、思考は料理人の腕、そして行動は調理にあたります。良い食材と良い腕を持つ料理人が揃い、調理という行動をすれば素晴らしい料理を作ることができます。
 しかし、腐りかけのダメな食材であれば、料理人の腕が良くても美味しい料理を作るのは難しいです。

 解像度も同じです。思考の材料となる情報が間違っていれば、思考能力が高くても正しい答えは出せません。情報と思考と行動の全てのレベルが高いことが理想です。
 解像度を上げるうえでは、情報や思考がまだ粗い状態でも行動量を増やす、つまり「とにかく行動しはじめる」ことが重要です。

 なぜなら、行動することで、周囲や市場からのフィードバックという情報を得られるからです。また、行動して得られた経験によって、実感を伴った思考も促されます。つまり、行動量を増やすことで、質の高い情報と思考を獲得するサイクルが回り始めます。

2)粘り強く取り組む

 情報と思考と行動の全てにおいて、「時間を十分にかける」ことも重要です。単に時間をかければよいというわけではありません。

 悶々と考え込む、誰かと深く議論するなど、情報と思考と行動の質を確保する必要があります。
 物凄く情報を集め、無茶苦茶頭をひねって考え、大量に行動し続けて、初めて良いアイデアに辿り着けるものです。

3)「型」を意識する

 行動量を上げるために、できることを全てやればよいというわけではありません。行動する時には、効率的な手段やベストプラクティスがあります。
 まずはその方法を学んでから、行動を始めるとよいでしょう。

 解像度を上げるための方法論、つまり「型」とは、先人たちの成功と失敗の積み重ねによって生まれた、ベストプラクティスの塊です。
 型に沿うことで、効率的に上達することができます。

解像度を上げるための「型」

 解像度を上げるための型を、「深さ」「広さ」「構造」「時間」の視点別に見ていくと、

「深さ」の視点で解像度を上げる方法

 「深さ」の視点で課題を捉えるとは、症状ではなく、病因を突き止めることともいえます。

症状ではなく病因に注目する

 例えば39 度の熱があるとする。この課題に対しては、解熱剤を飲むという解決策が思いつきます。
 しかし熱が出ているのなら、何らかの原因があるはずです。それが「病因」です。その病因は風邪、あるいは熱中症かもしれません。根本的な治療のために注意を払うべきなのは、その病因の方でしょう。

 このように、今課題だと思っているものが「症状」なのか「病因」なのかを意識することで、課題の解像度はぐっと上がります。

「内化」と「外化」を繰り返すことで深めていく

 深さの視点で解像度を上げる行為は、学習に似ています。学習のプロセスを考える時に用いられるのが、「内化」と「外化」という考え方です。

 内化とは、読む・聞くなどを通して知識を習得したり、気づきや理解を得たりすることです。
 外化とは、書く・話す・発表するなどの活動を通して、知識の理解や頭の中で思考したことなど(認知プロセス)を表現することです。この内化と外化を繰り返すことで、学習は進みます。

 深めるというと、詳しく物事を知る、そのために情報を集める「内化」がイメージされがちですが、「外化」、つまり書く・話す・発表するなど、試行錯誤して自分の中にあるものを表現するプロセスも同時に必要です。

「広さ」の視点で解像度を上げる方法

「広さ」の視点で解像度を上げる方法

 広さの視点で課題の解像度を上げることは、より広い視野を持って課題を捉えるということです。
 広げるうえで基本となるのは、「前提を疑う」「視座を変える」という2つの思考の型です。

前提を疑う

 まず、「そもそもを問います」。物事の前提を疑い、ゼロから考えることで新たな洞察を得ます。「ゼロベース思考」と呼ばれるものです。「そもそも何のためにあるのか?」「そもそも必要なのか?」といった問いは前提を見直すのに有効な問いです。

 イーロン・マスクは、スペースX の事業を考える時、「そもそもスペースシャトルは何でできているのか?」と考え、原材料の原価を計算したところ、当時のシャトルの金額の2%程度しかないことに気づいたそうです。彼は「そもそも」を考えることで莫大な利益がある場所に気づき、コストの安いロケットを作って、宇宙ビジネスを拡大しました。

視座を変える

 「視座」とは、物事を見る場所を意味します。高い山と低い山では、それぞれ視座の高さが違います。解像度を上げるうえでは、視座を高くして、広い視野を得ることが重要です。

 視座を高くする具体的な方法は、今の自分の立場より上の立場で考えることです。社内で何か仕事を依頼されたのであれば、なぜこの仕事が重要なのか、なぜ自分にこの仕事が割り当てられたのかを考え、場合によっては仕事の意味を捉え直します。

「構造」の視点で解像度を上げる方法

 「広さ」の視点で解像度が上がり、様々な課題の可能性が見えても、「構造」の視点がないと、どの課題を解決すれば最も価値が生まれるかがわからず、良い課題を選んで深めていくのは難しいものです。

分ける

 構造を把握するための基本は、渾然一体となっているものを「分ける」、つまり現象をうまく要素分解し、それぞれの要素を個別に認識することです。

 分ける時に最も重要なのは、「どのような切り口で分けるか」です。悪い切り口だと、分けた後に深めることができなかったり、意味のある洞察を導けなかったりします。

 切り口を考える時、MECE を意識しておきたいです。「漏れなくダブりなく」ということです。
 物事を分ける時、何か重要な要素を入れ忘れる(漏れがある)、重複する要素を入れてしまう(ダブりがある)、もしくはその両方が起こりえます。

 そのため、MECE は重要です。
 戦略論における「3C 」( Customer、Competitor、Company )や、マーケティングの「4P 」( Product、Place、Price、Promotion )といったフレームワークを「切り口」に使うのも1つの手です。

比べる

 課題を複数の要素に「分ける」ことができたら、次はそれぞれの要素を「比べる」ことで、より「構造」が見えてきます。

関係づける

 物事を「分ける」ことと、他の物事と「比べる」ことと同時に行う重要な作業が「関係づける」ことです。
 細かく分けた要素同士を特定の共通の性質で「関係づける」ことで、比べやすくなって新たな構造が見えてきて、洞察を得られることもあります。

 「分ける」「比べる」「関係づける」はそれぞれの作業が密接に関わっていて、何度も繰り返し行ったり来たりしながら試すことで、より良い課題の構造が見えてきます。

「時間」の視点で解像度を上げる方法

 実際のビジネスでは、時間とともに状況が変わり、それに応じて課題も変わります。課題の解像度を上げるには、課題がどう移り変わっていくのか、という時間軸を意識する必要があります。

変化を見る

 物事は時間とともに変化します。そこで変化に着目することで、時間の視点で解像度を上げることができます。

 ビジネスでは毎月の売上の変化が、基礎的な情報としてよく参照されます。変化を時系列で見ることで、今後の売上がどのような変化を辿るかが、ある程度予測できるからです。

 多くの場合、変化にはパターンがあり、そのパターンを把握すると構造や因果関係も見えてきます。

プロセスやステップを見る

 時間の流れに従って何が起こるかを把握することで、見えてくるものがあります。物事をステップごとに分割し、プロセスを見ていくと、解像度を上げることができます。

 広告やIT のビジネスでは、しばしばファネルモデルというものが使われます。漏斗(ファネル)でろ過するように、プロセスやステップを経て、減っていく人や物の数を可視化する手法のことです。

 例えば購買行動では、認知 → 興味関心 → 比較検討 → 購入の順に、対象となる人がどのくらい減っていくかを整理することで、どの部分に取り組むべき課題があるかを見極められます。

 他にも、より抽象的なプロセスとして、バリューチェーンがあります。企業が価値を生む活動の連なりをプロセスとして可視化したものです。
 可視化することで、どの部分を改善するべきかが見えてきますし、独自のバリューチェーンを構築すれば独自の価値を生みだすことができます。

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