2020年は「未払い残業代対策」が大きな課題の年か

2020年は「未払い残業代対策」が大きな課題の年か

セブン‐イレブン・ジャパン未払い残業代問題

 昨年の2019年12月、セブン‐イレブン・ジャパンは、パート・アルバイトの残業代が一部未払いとなっていた件で、永松社長が記者会見で謝罪しました。
 同社の支払不足額は2012年3月以降分だけで4.9億円(遅延損害金1.1億円含む)に上り、1人当たり最大280万円となっていました。

 原因は精勤手当や職責手当等、残業代の対象となる手当を含めずに計算していたことにあり、2019年12月15日掲載の東洋経済ONLINEの記事によれば、次の通りでした。

「2001年に計算式を変えた際、式に基づいて計算が正しく行われるかという確認はしていた。しかし、人事や労務管理のプロである社会保険労務士によって計算式そのものが正しいか確認された記録はなく、今までミスが放置されていた。」

未払い残業代放置は経営を直撃するダメージに

 この問題により、同社は厳しい批判を浴びせられました。
 批判は、未払いの発生のみならず、労働基準監督署の是正勧告等を受けていたにもかかわらず長年放置していた姿勢にも向けられました。

 こうした批判は、今後の人材募集にも深刻な影響を与えかねません。

今年2020年4月以降、未払い残業代リスクはさらなる脅威に

 昨年2019年12月27日、厚生労働省は、賃金等支払いを請求する権利の時効を現行の2年から原則5年へと延長する方針を固め、2020年4月1日以降、労働基準法が改正される見通しとなりました。

 改正法施行後も、当面の間は3年とされる見通しですが、5年経過後に見直し、以降は原則どおり5年とすべきという意見も出されています。
 つまり、未払い残業代が発覚した場合でも、これまでは2年分の不足分を支払えばよかったのですが、2倍以上の金額を支払わなければならないこととなります。

残業代が適正に支払われているかチェックを

 2020年4月1日以降は、時間外労働時間の上限規制も全面施行となるため、残業時間のカウントと残業代の支払いに注意を払う必要があります。

 ソフトやクラウドサービスを利用しているから大丈夫と思っても、セブン‐イレブン・ジャパンのように計算方式が誤っていて、未払い残業代が発生し続けるといったこともあり得ます。
 二の舞を踏んで危機に陥らないためにも、一度厳しく点検するか、チェックを受けてみる必要があるでしょう。

労務リスクが経営リスクの1番に

 企業が重視する経営上のリスクについて、東京海上日動火災保険が行った調査で、「労働・雇用問題」が2008年の調査開始以来、初めて1位になっています。
 労働力不足や長時間労働の問題が注目を集める中、企業の新たなリスクとして急浮上し、今や放置できない大きなリスクの温床として「労務」が存在しています。
 この話題は以前記事にしておりますので、以下のリンクから確認いただければ幸いです。

労務リスクの脅威が経営リスクの中で1位に(2017年)

 当社もそうでしたが、顧客対応や日常業務をこなすほうが大優先で、また資金も重要事項なのでキチンと処理するのですが、労務は二の次・三の次としてしまうことは、よく理解できます。

 しかしもはや放置することは経営をも脅かす問題であることを認識したいものです。

労務監査を定期的に実施することをお勧め

 経営労務監査は昔から存在していましたが、財務監査、業務監査に比べれば知名度も低く、また適正に経営労務監査を実施できる機関や人材も限られているのが現状です。
 これからは、就業規則や下位規程や記入様式などの文書等の監査、そして実際の運用面の監査、そして適材適所が実現されているか、従業員の能力開発までも適切に手立てを講じているか、経営労務の全般的な監査が重要になりえると感じます。

 当社でも、経営労務監査はコンサルと同様重視しておりますが、さらにメニューを充実させるように鋭意準備中です。
 さらに精度をアップさせ、経営に役立てるよう継続努力する所存です。

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