ロジスティクス4.0~物流の創造的革新の衝撃
ロジスティクス4.0物流の創造的革新(小野塚征志著、日本経済新聞出版社(日経文庫)2019年3月15日発行/231頁)の内容が衝撃的でしたので、ご紹介します。
(著者紹介)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て、2007年に欧州系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーに参画。2015年より現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等をはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。
ロジスティクス4.0~物流の創造的革新要旨
物流の世界では、現在、「ロジスティクス4.0」という新たなイノベーションが進んでいる。
すなわち、IoTやAIなどの進化がロジスティクスの根幹に変化をもたらし、「省人化」と「標準化」による「物流の装置産業化」が起きつつある。
ロジスティクス4.0における省人化・標準化とは、次のようなものである。
- 省人化:「人の操作や判断」を必要とするプロセスが減る。
- 標準化:物流に関する様々な機能・情報がつながり、輸送ルートなどを柔軟に組み替えられるようになる。
物流の装置産業化によって、物流は「人の介在をほとんど必要としないインフラ的機能」に変わっていく。属人的なノウハウは、機械やシステムに置き換わる。
また、物流は属社的なものではなく、広く共有される仕組みになる。
物流会社が勝ち残っていくキーワード
物流会社が勝ち残っていくには、次のいずれかの領域でプラットフォーマーとしての地位を獲得することが必要だ。
- 物流サービスを核としたロジスティクスプラットフォーマー物流サービスの種類や提供地域を絞り込み、そこで多くの荷主・荷物を獲得し、事業規模の拡大を図る。
- 荷主業界を核としたロジスティクスプラットフォーマー特定の業界・業種をターゲットに、事業規模を拡大する。
- 物流+αのオペレーションアウトソーサー特定の荷主に対して、物流以外のオペレーションサービス(例えば企画や管理など)も提供する。
- 物流機械・システムのインテグレーションサプライヤー自社で開発した機械・システムを外部に販売する。
ロジスティクス革新の変遷
ロジスティクスは、次のような革新の変遷を経てきたということですが、今、根幹から劇的に変わろうとしているということです。
ロジスティクス1.0:輸送の機械化
古来、大量・長距離輸送の要は船舶だった。だが、19世紀に入り、この状況が大きく変化する。鉄道(蒸気機関車)が出現し、陸上での輸送力を飛躍的に高めた。蒸気機関の実用化は船舶の運用にも変化をもたらす。
天候に左右されない蒸気船が出現し、海上輸送の定時性を格段に高めた。
さらに、20世紀に入ってからはトラックが普及し、数多のトラック運送会社が産声を上げた。
ロジスティクス2.0:荷役の自動化
1950年代に入ると、「荷役の自動化」が始まる。前述のように輸送の機械化は進んだものの、荷物の積み降ろし作業は全て人手に頼っていた。
だが、第2次世界大戦後にフォークリフトなどが普及し、荷役作業の効率性を高めた。また、60年代後半には、倉庫内の荷役作業の自動化が進んだ。
ロジスティクス3.0:管理・処理のシステム化
1970年代に入ると、「管理・処理のシステム化」の萌芽が見え始める。それまで、荷物や機械の管理・処理に関する業務は人手に頼ったままだった。
この状況に、一部の大企業を中心とした基幹業務のシステム化が変化をもたらした。
例えば、WMS(倉庫管理システム)は、倉庫内の在庫数量を管理するために導入された。
それが現在、在庫だけでなく、入荷、格納、ピッキング、検品、梱包までの作業状況などをトータルで管理するシステムとして活用されるようになっている。
ロジスティクス4.0:物流の装置産業化
そして、現在進みつつある第4の革新こそ、ロジスティクス4.0である。IoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーの進化と、活用の拡大は、ロジスティクスの根幹を変えようとしている。
「省人化」と「標準化」による「物流の装置産業化」が起きつつあるのだ。
省人化と標準化による革新
- 輸送の省人化
- 標準化の方向性「垂直統合による標準化」「水平統合による標準化」
- 物流の装置産業化
- 属人的世界からの脱却
- 属社的世界からの脱却
ロジスティクスの世界における今後の20年は、このITの進化に比肩すると主張しています。「トラックドライバーが運転免許を持っていないこと」「ロボットが荷物を届けること」が普通になっているかもしれないと。
ロジスティクスだけではなく、様々な世界を連想せずにはいられません。
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