平成22年度税制改正大綱は中小企業には概ね朗報

 税制改正大綱とは、政府や与党が毎年12月に予算編成に先立って取りまとめる税制改正の方針のことであり、政権が自民党から民主党に交代したことにより、今回は民主党が中心となって行われた。

 平成21年12月22日に平成22(2010)年度の税制改正大綱が民主党より発表されたので、中小企業向けの税制を確認しておこう。

 この税制改正大綱においても、中小企業向けの優遇税制はおおむね延長されることとなったようだ。

 大綱の内容は、3月の国会を通過するまでは最終決定でないので、ご留意いただきたい。

 いわゆるリーマンショック以降の経済の世界同時不況から1年以上を経過するが、中小企業を取り囲む環境は依然厳しく、中小企業向けの法人税率の引下げが期待されたが、中小企業向けの法人税率の引下げについては、今回は見送りとなった。

社長給与一部損金不算入制度の廃止

 この制度は、特殊支配同族会社がその業務主宰役員(通常は社長)に対して支給する給与の額のうち、給与所得控除相当部分を法人税の計算上は損金不算入とするというものである。

 悪法と噂もされたが、改正により平成22年4月1日以後に終了する事業年度から適用廃止となる。

 ちなみに社長およびその同族関係者が株式の90%以上を保有し、かつ、常務従事役員の過半数を占めている、いわゆる典型的な中小同族企業のことを「特殊支配同族会社」と定義している。

 (法人所得+社長給与)の3年平均が1,600万円以下、または(法人所得+社長給与)の3年平均が1,600万円超3,000万円以下で社長給与の割合が50%以下の場合は対象外である。

 この課税では、同族会社の役員給与は法人税で費用となり、さらに給与所得控除が所得税でも費用となる「二重控除」問題が残る。

 個人事業主との課税の不均衡を是正するため、平成23年度の税制改正で抜本的な措置が講じられる予定のようだ。

中小企業の交際費の損金算入の特例

 中小企業の交際費の損金算入の特例が平成24年3月31日まで2年延長される。

 中小企業の交際費の損金算入の特例とは、年間600万円までの交際費は90%が費用となるものである。

中小企業投資促進税制の延長

 中小企業投資促進税制が平成24年3月31日まで2年延長される。

 この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等が、160万円以上の機械装置や年間合計120万円以上のパソコン・デジタル複合機を取得した場合等に、取得価額の7%の税額控除または30%の特別償却を選択できるというものである。

 ここでの中小企業者とは、資本金1億円以下の法人、農業協同組合等、従業員1,000人以下の個人事業主を指している。

 中小企業は、労働生産性、いわゆる従業員1人当たり付加価値が低く、大企業に比べて2倍の格差があり、競争力強化のために設備投資は行わなくていけないわけだが、その促進を後押ししている制度だ。

少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長

 青色申告書を提出している中小企業者等が最も活用しているであろう「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が、平成24年3月31日まで2年延長される。

 同制度は、取得価額30万円未満であれば年間300万円を上限として、全額即時費用できるというものである。

 社長や経営陣が経理までしていることも多い中小企業の事務負担が軽減され、メリットも大きいとされる。

中小企業向けの法人税率の引下げを期待

 中小企業向けの法人税率の引下げについては、今回は見送りとなり残念だった。

 税制は企業経営においてとても重要なので、中小企業の活性化に弾みをつけてくれるような改正が望ましく、中小企業向けの法人税率の引下げをぜひとも期待したいところだ。