パワハラ防止法における企業の体制構築ポイント

2021年10月25日

パワハラ防止法における企業の体制構築ポイント

パワハラ防止法における企業の体制構築ポイント

 パワーハラスメントについて規定したパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が2020年6月されており、2022年4月には中小企業も施行されます。

 注意すべきポイントは、パワーハラスメントの定義が明文化され、企業に対策を行う義務が課されたことです。
 本格施行の前に、しっかりと注意ポイントをおさらいしてみましょう。

パワーハラスメントの定義(ポイント1)

 今回の法改正で、職場におけるパワーハラスメントは以下3つの要素をすべて満たすものだと定義されました。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

 ここでいう「優越的な関係」には、上司・部下といった役職上の上下関係だけでなく、知識や経験の差によって生まれる上下関係も含まれます。

パワーハラスメントの6類型と該当/非該当例

 厚生労働省からは、パワーハラスメントの6類型が示されており、すっかり有名になりましたが、以下に示します。

類型 内容 パワハラ該当例 パワハラ非該当例
身体的な攻撃 暴行・傷害 殴打、足蹴りを行う 誤ってぶつかる
精神的な攻撃 脅迫・名誉殿損・侮辱・ひどい暴言 人格を否定するような言動 重大な問題行動に対して一定程度強く注意
人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視 同僚が集団で無視 新卒社員を短期間集中的に別室で研修
過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 新卒社員に到底対応できない目標を課し、未達成に対し厳しく叱責 繁忙期に通常時よりも一定程度多い業務を任せる
過小な要求 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと 嫌がらせのために仕事を与えない 能力に応じて、一定程度業務量を軽減
個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること 病歴など労働者の機微な個人情報を了解を得ずに暴露 了解を得て機微な個人情報を必要な範囲で人事部門に伝達

出典:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省)

パワーハラスメント対策の義務化(ポイント2)

 パワーハラスメントの防止措置を取ることが事業主の義務となりました。
 適切な措置を講じていない場合は是正指導の対象となり、指導に従わない場合は、企業名が公表される場合があります。

 指針では、企業が行わなければならない措置として10項目、企業が行うことが望ましい取り組みとして4項目が定められています。

 義務化10項目、望ましい取り組み4項目のあわせて14項目を行っていくことが企業に求められていますので、理解して実践をしたいところです。

企業に義務づけられるパワハラ防止措置10項目

取り組み4項目と義務事項10

 以下の4項目、10の事項について義務が課されます。

事業主の方針等の明確化と周知・啓発

  • 1.パワハラ防止の方針を定め、研修等で周知・啓発する
  • 2.パワハラの行為者への懲戒規定を定める

相談体制の整備

  • 3.相談窓口を設置する
  • 4.相談担当者は、相談者の心身の状況に配慮しながら、必要に応じて人事部門と連携するなど、適切な対応を行う

事後の迅速かつ適切な対応

  • 5.事実関係を迅速かつ正確に確認する
  • 6.パワハラ認定後、被害者に配慮してメンタル不調への相談対応などの対応を行うこと
  • 7.パワハラ認定後、行為者に対する懲戒などの措置を適正に行うこと
  • 8.再発防止に向けた措置を講ずること

上記と併せて講ずべき措置

  • 9.相談者・行為者等のプライバシーを保護する
  • 10.相談等を理由に解雇等の不利益な取り扱いをしない

パワハラ防止のために行うのが望ましい事項

1.パワハラだけでなく、セクハラ・マタハラ等の職場のハラスメントに関する一元的な相談窓口の設置

職場におけるパワーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取り組み

2.コミュニケーション活性化・円滑化のための研修等

  • 日常的なコミュニケーションや定期的な面談実施
  • 感情をコントロールする手法についての研修
  • コミュニケーションスキルアップについての研修
  • マネジメントや指導についての研修

3.過度な負担を強いる職場環境や組織風土の改善

4.社内アンケート調査等による状況の的確な把握や必要な見直しの検討

出典:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省)

 ハラスメントは組織に大きな危機を及ぼす可能性もあり注意したいものです。

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