目次
9 パフォーマンス評価
9.1 監視、測定、分析及び評価
9.1.1 一般
- ・環境パフォーマンスを監視し、測定し、分析し、評価する。
- ・以下の事項を決定すること。
- a. 監視及び測定が必要な対象
- b. 該当する場合には、必ず(as applicable)、妥当な結果を確実にするための、監視、測定、分析及び評価の方法
- c. 組織が環境パフォーマンスを評価するための基準及び適切な指標
- d. 監視及び測定の実施時期
- e. 監視及び測定の結果の分析及び評価の時期
- ・必要に応じて、校正された又は検証された監視機器及び測定機器が使用され、維持されていることを確実にする。
- ・環境パフォーマンス及びEMSの有効性を評価する。
- ・コミュニケーションプロセスで特定したとおりに、かつ、順守義務による要求に従って、関連する環境パフォーマンスに関連する情報について、内部と外部の双方のコミュニケーションを行う。
- ・監視、測定、分析及び評価の結果の証拠として、文書化した情報を保持(記録類)する。
「測定可能」の解説
パフォーマンスの定義は「測定可能な結果」である。
測定可能(measurable)とは、Quantitative(定量的)とQualitative(定性的)のいずれも用いることが可能である、とされている。
解説
■環境パフォーマンスとは、環境側面のマネジメントに関連する測定可能な結果。
■パフォーマンスは、活動、プロセス、製品(サービスを含む)、システムまたは組織の運営管理に関連している。
■環境目標の達成に向けた進捗の監視も、本箇条の要求事項である。(6.2.2e参照)
■本箇条では、6.2.2で策定された環境目標の評価の「基準及び指標」も決定する。
■監視・測定の結果は、信頼でき、再現性があり、かつ、追跡可能であることが必要である。監視・測定のデータを出すだけではなく、データから何を読み取るか、データの意味するところを理解することが重要である。
■環境パフォーマンスの分析及び評価の結果は、適切な処置を開始する責任及び権限をもつ人々に報告することが望ましい。
■データの妥当性・信頼性のために、測定機器の管理(校正含む)が要求されている。
■順守義務に従って、届出等の環境パフォーマンスの報告を行うことが求められ、報告の手順は、箇条7.4「コミュニケーション」に定められる。
文書、記録例
「環境パフォーマンス報告書」、「環境目標進捗管理表」、「環境マネジメントプログラム」、「測定器の校正記録」など。
9.1.2 順守評価
- ・順守義務を満たしていることを評価するために必要なプロセスを確立し、実施し、維持する。
- ・以下の事項を行うこと。
- a. 順守を評価する頻度を決定する
- b. 順守を評価し、必要な場合には処置をとる
- c. 順守状況に関する知識及び理解を維持する
- ・順守評価の結果の証拠として、文書化した情報を保持(記録類)すること。
解説
■本箇条はEMS固有の箇条である。
■順守評価の頻度及びタイミングは、パフォーマンスによって異なることがあるが、全ての順守義務の頻度を定めて評価する必要がある。
■順守評価が「定期的(periodically)」から「頻度(frequency)の決定」に変更となり、より具体的な時間の概念が導入された。
■順守評価者は、法令適用などの最新情報の理解を含む、評価するだけの力量が求められる。
■順守に関連して、自主基準として自ら定めた頻度や基準に対して逸脱していれば、実際の法的要求事項の不順守に至らない場合であっても処置が必要である。
■文書化した情報のうち、規制当局、地域コミュニティ等に報告が義務付けられているもの(水質、大気に関する測定記録等)は、箇条7.4.3「外部コミュニケーション」の報告義務と関連することに留意が必要である。
■c項は、順守義務の評価者は、最新の順守義務に対応するための知識及び理解力を持つことを要求されている。例えば、法改正等による順守義務に変化があれば、遅滞なく対応するための力量。(箇条7.2参照)
文書、記録例
「順守評価表」、「順守義務に関する水質、大気に関する測定記録類」など。
9.2 内部監査
9.2.1 一般
・EMSが次の状況にあるか否かに関する情報を提供するために、あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなければならない。
- a. EMSが次の事項に適合している
- ①EMSに関して組織自体が規定した要求事項
- ②この規格の要求事項
- b. EMSが有効に実施され、維持されている
解説
■内部監査は、その組織自体が行うか、または組織の代理で外部関係者が行っても良い。
■b項で2015年版では、「適切に」が「有効に」に変更された。これにより、内部監査でもパフォーマンスの向上に着眼することが強調された。これは、附属書SLを採用した結果であるが、EMSとしては重要な変更である。
■有効性(effectiveness)とは、計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度のことである。
文書、記録例
本箇条で文書化された情報の要求はないが、箇条9.2.2で求められている。
9.2.2 内部監査プログラム
- ・内部監査の頻度、方法、責任、計画要求事項及び報告を含む、内部監査プログラムを確立し、実施し、維持する。
- ・内部監査プログラムを確立するとぎ、関連するプロセスの環境上の重要性、組織に影響を及ぼす変更及び前回までの監査の結果を考慮に入れる。
- ・以下に示す事項を行う。
- a. 各監査について、監査基準及び監査範囲を明確にする
- b. 監査プロセスの客観性及び公平性を確保するために、監査員を選定し、監査を実施する
- c. 監査の結果を関連する管理層に報告することを確実にする
- ・監査プログラムの実施及び監奎結果の証拠として、文書化した情報を保持(記録類)する。
「考慮」の解説
「考慮に入れる(take into account)」は、考慮する必要があり、かつ、除外できない。
「考慮する(consider)」は、考慮する必要があるが、除外できる。
解説
■内部監査プログラムに関しても、組織に影響を及ぼす変更を考慮に入れる(take into consideration)必要がある。
■監査員は、実行可能な限り、監査の対象となる活動から独立した立場にあり、利害抵触がないことが望ましい。内部監査において特定された不適合は、是正処置が必要である。
文書、記録例
「内部監査手順書」、「内部監査規定」、「内部監査計画書」、「内部監査プログラム」、「内部監査報告書」、「不適合報告害/修正・是正処置記録」、「フォローアップ記録」、「内部監査員教育、訓練及び認定記録」など。
9.3 マネジメントレビュー
- ・トップマネジメントは、EMSが、引き続き、適切、妥当かつ有効であることを確実にするために、あらかじめ定めた間隔で、EMSをレビューする。
- ・以下の事項を考慮する。
- a. 前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況
- b. 次の事項の変化
- ①EMSに関連する外部及び内部の課題
- ②順守義務を含む、利害関係者のニーズ及び期待
- ③著しい環境側面
- ④リスク及び機会
- c. 環境目標が達成された程度
- d. 以下に示す傾向を含めた、環境パフォーマンスに関する情報
- ①不適合及び是正処置
- ②監視及び測定の結果
- ③順守義務を満たすこと
- ④監査結果
- e. 資源の必要性
- f. 苦情を含む、利害関係者からの関連するコミュニケーション
- g. 継続的改善の機会
- ・アウトプットには、以下の事項を含めること。
- - EMSが引き続き適切で、妥当で、かつ、有効であることに関する結論
- - 継続的改善の機会に関する決定
- - 資源を含む、EMSの変更の必要性に関する決定
- - 必要な場合には、環境目標が達成されていない場合の処置
- - 必要な場合には、他の事業プロセスへのEMSの統合を改善するための機会
- - 組織の戦略的な方向性に関連する示唆(implication)
- ・マネジメントレビューの結果の証拠として、文書化した情報の保持(記録類)。
解説
■マネジメントレビューは、ハイレベル(経営戦略的)なものであることが望ましく、詳細な情報の徹底的なレビューでなくともよい。
■全ての項目を同時にレビューする必要はなく、一定の期間に渡って行って良い。役員会のような管理層の定期会合の活動に含めても良い。
■インプットの表現はなくなり、考慮事項という表現になったが、基本的な考え方は同じである。なお、2004年版の「変化している周囲の状況」は、b項の「内部・外部の課題、順守義務を含む利害関係者のニーズ及び期待、著しい環境側面、リスク及び機会」でより具体的に示された。また、資源の妥当性を考慮することがe項に追加された。
■b項の「変化の事項」はマネジメントレビューにおいては重要という視点から上位に置かれている。
■アウトプットは、具体的な項目が明確にされた。アウトプットには「EMSが引き続き適切で、妥当で、かつ、有効であることに関する結論」が求められている。
- ・適切性(Suitability)とは、EMSが組織、運用、文化及び事業システムにどう合っているか
- ・妥当性(Adequacy)とは、この規格要求を満たし十分なレベルで実施されているか
- ・有効性(Efrective)とは、望ましい結果を達成しているか
■マネジメントレビューのアウトプットと、箇条5.1で言及しているトップマネジメントの実証事項は関連している。マネジメントレビューのアウトプットによってトップマネジメントの実証項目の主なものは確認することが可能である。
■マネジメントレビューの文書化された情報は、複数でもよい。
文書、記録例
「マネジメントレビュー議事録」、「役員会議事録」、「経営戦略会議議事録」など。
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