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4 組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解
- ・組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、QMSの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える外部及び内部の諜題(issues)を決定(determine)する。
- ・これらの外部及び内部の課題に関連する情報を監視・レビューする。
- 注記1:課題には、検討の対象となる、好ましい、もしくは、好ましくない要因及び状態が含まれる。
- 注記2:外部の状況は、国際、国内、地域または地方を問わず、法令、技術、競争、市場、文化、社会及び経済の環境から生じる課題を検討することで容易に理解される。
- 注記3:内部の状況は、組織の価値観、文化、知識及びパフォーマンスに関する課題を検討することで容易に理解される。
解説
■本箇条では、組織の目的(purpose)及び戦略的方向性に関連があり、QMSの「意図した結果(intended result)」に影響を及ぼす可能性のある、内部及び外部の「課題(issues)」を決定(determine)し、監視・レビューすることを要求している。ここでアウトプットされる「課題」は、組織レベルの「課題」であり、経営層(top management)が関与する(ハイレベルな)課題である。 「意図した結果」というのは、マネジメントシステムの目的のことであり、箇条1「適用範囲」の以下のa)とb)は必ず含まなければならない。
- a. 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合
- b. QMSの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用、並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して、顧客満足の向上を目指す場合
なお、附属署SLでは、「意図した結果(result)」ではなく、「意図した成果(outcome)」となっていたが、意味は同じである。
■組織は、「品質方針」と整合していれば「意図した結果」を追加することもできる。例えば、「企業の継続的発展(ゴーイングコンサーン)」や「顧客の創造」等を「意図した結果」として、QMSの目的に含めることができる。
■「課題」の抽出方法に関しては、箇条4.1の注記に詳しく記述されている。注記によると、外部の課題に関しては「国際、国内、地方又は地域を問わず、法令、技術、競争、市場、文化、社会及び経済の環境から生じる課題」、内部の課題に関しては「組織の価値観、文化、知識及びパフォーマンスに関する課題」とあり、経営層の視点で、幅広く、組織を取巻く環境を俯瞰することを求めている。環境の変化を認識する重要性は、企業を生き物に例えた企業進化論である「強い企業が生き延びるのではない、環境に適応する企業が生き延びる」の概念と合致する。
■課題(issue)の意味は「人々が何かについて議論している重要な話題」であり、ネガティブな内容だけで無く、プラスとなる事柄も対象となる。
文書、記録例
文書化された情報の要求はない。一方、箇条6.1「リスク及び機会への取組み」では、4.1「内外の課題」と4.2「利害関係者のニーズ」を考慮して「リスク及び機会」を決定するとある。
実際に組織としては、「マクロ環境分析」、「ミクロ環境分析」、「SWOT分析」「組織の課題」「事業計画の為のインプット情報」など様々な手法を、既に利用している場合も考えられる。組織が既に活用している手法やその結果がある場合は、それらを利用することも有意義である。
事例としては、「マクロ環境分析」、「ミクロ環境分析」、「SWOT分析」「組織の課題」「事業計画のためのインプット情報」など様々な手法が考えられる。組織が既存で活用している手法や記録等が要件を満たしていれば準用も可能である。
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
- ・顧客要求事項並びに適用される法令・規制要求事項を満たす製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に与える影響又は潜在的影響のため、次の事項を決定すること。
- a. QMSに密接に関連する利害関係者
- b. QMSに密接に関連する利害関係者の要求事項
- ・要求事項に関する情報は、監視し、レビューする。
解説
■箇条4.2「利害関係者のニーズ及び期待の理解」では、「関連のある利害関係者」の「関連のある要求事項」を特定することを要求している。
■組織は、それらが特定された後に、これらの利害関係者及び彼らの要求事項に関して保有している情報を監視・レビューすることが求められる。
■「密接に関連する利害関係者」とは、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力に影響を与える団体または個人であり、時の経過と共に変化するものである。
■ISO9000:2015用語の定義では、利害関係者の例として「顧客、所有者、組織内の人々、提供者、銀行家、規制当局、組合、パートナー、社会(競争相手または対立する圧力団体を含むことがある)」を挙げている。顧客以外に株主や従業員が利害関係者に含まれていることは、「企業の継続的発展(ゴーイングコンサーン)」も「要求事項」に含まれることを示唆していると考えられる。
■QMSの意図した成果が顧客満足の向上である以上、“顧客”が最も重要な利害関係者であることは変わらない。利害関係者が、QMSに密接に関連するかどうかを決定するのは、組織である。
文書、記録例
文書化された情報の要求はない。一方、箇条6.1「リスク及び機会への取組み」では、4.1「内外の課題」と4.2「利害関係者のニーズ」を考慮して「リスク及び機会」を決定するとある。
実際に組織として、「市場調査」、「アンケート調査」等、あるいは、CSRレポート等で記載されるようなステークホルダーダイアログ/エンゲージメントを既に活用している場合は、それらもその役割を果たす。
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