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0 序文

0.1 一般

 QMSは、組織が戦略上採用するものである。

 組織は、この規格に基づいてQMSを実施する事で、製品・サービスの一貫した提供、顧客満足の向上、リスク・機会への取組み等の便益を得られる。

 但し、画一化、社内文書と規格箇条の一致、及び、規格用語の使用は強制しない。

 2015年版もPlan・Do・Check・Act(PDCA)サイクルとプロセスアプローチを採用し、更にリスクに基づく考え方を採用している。


解説

 2008年版から箇条番号や用語は変化しているが、組織内での文書や用語をこの規格に合わせる必要がないことが名言されている。

 QMSの採用は組織の戦略上の決定であることと、QMSで得られる便益が示されている。

 “ISO9001はPDCAサイクルとリスクに基づく考え方を含むプロセスアプローチを採用する”。

 この規格の最も重要なコンセプトはプロセスアプローチであり、PDCAサイクルとリスクに基づく考え方の上位概念として位置づけられた。PDCAサイクルは従前からのモデルであるが、計画を実行、運用していく中で、システム運用の結果であるパフォーマンスが当初より期待する目標から乖離した場合、若しくはするかもしれない状況に対応するためにリスクという概念を導入し、目標管理の精度を上げること、そして法的、事業上のリスクを低減していくことが可能になることを示唆しているものと考えられる。

0.2 品質マネジメントの原則

 品質マネジメントの原則は、ISO9000:2015に規定される以下の7つである。

  • ・顧客重視
  • ・リーダーシップ
  • ・人々の積極的参加
  • ・プロセスアプローチ
  • ・改善
  • ・客観的事実に基づく意思決定
  • ・関係性管理

解説

 品質マネジメントの原則は、ISO9000:2015の箇条2.3に定義されている。

 ISO9004:2009では、以下の8原則であったが、ISO9000:2015では7原則となった。

  • 1.顧客重視
  • 2.リーダーシップ
  • 3.人々の参画
  • 4.プロセスアプローチ
  • 5.マネジメントへのシステムアプローチ
  • 6.継続的改善
  • 7.意思決定への事実に基づくアプローチ
  • 8.供給者との互恵関係

 品質マネジメントの原則の主な改正点は、“プロセスアプローチ”と“マネジメントへのシステムアプローチ”とを“プロセスアプローチ”にまとめたことによる数の減少である。

 システムアプローチはプロセスが有機的に連結されてある目的を達成するための機能集合体となった状態と考えられるが、マネジメントの手法に属人的ではなくこれらのシステム、プロセスの考え方を導入してより効果的、効率的な経営を目指すという概念が、広義の意味ではプロセスアプローチに含まれる内容であることから統合されたものである。

0.3 プロセスアプローチ

0.3.1 一般

 顧客満足を向上させるために、プロセスアプローチを採用する。

 プロセスアプローチを採用することにより、以下のメリットがある。

  • ・顧客要求の理解と充足
  • ・付加価値という切り口からのプロセスの検討
  • ・プロセスパフォーマンスの向上
  • ・客観的評価によるプロセスの改善

解説

 本箇条では、プロセスアプローチの利点が述べられている。

“プロセス”の定義は「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と附属書SL3.12に述べられている。

 ISO9001:2015の最も重要なコンセプトが“プロセスアプローチ”である。“プロセスアプローチ”は“PDCAサイクル(0.3.2)”と“リスクに基づく考え方(0.3.3)”の上位概念として位置付けられている。 プロセスアプローチの採用により、組織は、活動が首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連するプロセスとして理解され、これにより、組織の全体的なパフォーマンスを向上することができる。

 プロセスにはインプットとアウトプットが存在する。顧客要求事項を満足させることをとってみても、顧客要求事項や期待値が正確かつタイムリーに理解されていることが重要であり、またアウトプットである満足度についてはインプットである期待に対して、どの程度の評価が得られているのかを把握するということになる。また、プロセスそのものを改善することにより、より高いパフォーマンスが期待されるという効果が期待できる。これには客観的評価をインプットすることによる効果が大きいとしている。

 箇条4.4に、プロセスアプローチの採用に不可欠な要求事項が規定されている。

0.3.2 PDCAサイクル

 2008年版に引き続き2015年版でもPlan・Do・Check・Act(PDCA)モデルが採用された。これは、附属書SLの採用による。

 PDCAモデルと箇条の関係は、次のようになる。

  • ・Plan:箇条6
  • ・Do:箇条7、箇条8
  • ・Check:箇条9
  • ・Act:箇条10

 箇条5の「リーダーシップ」は、PDCAサイクルを円滑に回すための重要な推進力である。

図1-PDCAとこの企画の枠組みとの関係


解説

 2008年版に引き続き、PDCAアプローチの概念が枠組みに導入された。

 図1は、これまでのモデルと大きな相違はないが、システムへのインプットとして“顧客要求事項”、“組織及びその状況”、“利害関係者のニーズ及び期待”が含まれている。また、アウトプットとして“製品及びサービス”が含まれた。

 システムへのインプットとアウトプットが明確にされ、ビジネスマネジメントの一部としてより明確に捉えられるようになった。

0.3.3 リスクに基づく考え方

 リスクに基づく考え方は2008年版では、予防処置として含まれていた。

 2015年版では、リスク及び機会の双方への取組みにより、QMSの有効性の向上、改善された結果の達成、及び好ましくない影響の防止のための基礎を確立することで、予防処置の拡大を図っている。

 機会とは、例えば、新規顧客の獲得、新製品・サービスの開発、無駄の削減、生産性向上等、目的を達成するのに有利な状況のことである。

 リスクとは、不確かさの影響であり、その不確かさは、好ましい場合(Positive)と好ましくない場合(Negative)がある。


解説

 「マネジメントシステム全体が予防処置のツールである(付属書SL 3)」という考え方に基づいて規格は構成された。但し、文書化されたリスクマネジメントのプロセスは要求されていない。

 リスクに基づく考え方は、ISO9001:2008においては、予防処置、再発防止への取組みとして、その概念が含まれていた。

 ISO9001:2015では、リスク対応をプロセスに組み込む形となったので、予防処置の箇条は無くなっている。予防処置の発展的解消と言われている。

※ プロセスアプローチが少し分かりにくいかも知れないので補足しておこう。

  • ・本当に必要なプロセスに基づいて行われているか?
  • ・作業工程の中に無駄な手順などは無いか?

といった視点で業務を点検し、見直すというアプローチ手法を指している。   “リスクに基づく考え方”の例

■ 製造工程におけるリスク(危険)への対応

  • ①安全性の概念を取り入れて設備を計画・導入し、配置する
  • ②保護具など、技術的な危険防止策を導入する
  • ③特別なトレーニングを定期的に実施し、被害を最小化する

■特性要因図(Ishikawa diagram)による、リスク(故障)の特定と対応

0.4 他のマネジメントシステム規格との関係

iso_09_00.1700729771.txt.gz · 最終更新: by norimasa_kanno
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