・パフォーマンス及びQMSの有効性を評価
・この結果の証拠として適切な文書化した情報を保持(記録類)
「測定可能」の解説
パフォーマンスの定義は「測定可能な結果」である。
測定可能(measurable)とは、Quantitative(定量的)とQualitative(定性的)のいずれも用いることが可能である、とされている。
解説
■パフォーマンスとは、QMSに関連する測定可能な結果である。
■パフォーマンスは、活動、プロセス、製品(サービスを含む)、システムまたは組織の運営管理に関連している。
■品質目標の達成に向けた進捗の監視も、本箇条の要求事項である(6.2.2.e参照)。
■パフォーマンスの分析及び評価の結果は、適切な処置を開始する責任及び権限をもつ人々に報告することが望ましい。
■監視・測定の結果は、信頼でき、再現性があり、かつ、追跡可能であることが必要である。
監視・測定のデータを出すだけではなく、データから何を読み取るか、データの意味するところを理解することが重要である。
■データの妥当性・信頼性のために、測定機器の管理(校正含む)が要求されている。(7.1.5.2参照)
文書、記録例
「監視・測定対象リスト」、「監視・測定実績データの記録」、「データの分析評価記録」、「データ分析規程」など。
・顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がどのように受けとめているかを監視する。この情報の入手、監視及びレビューの方法を決定する。
注記:顧客の受け止めの監視には、例えば、顧客調査、製品及びサービスに関する顧客からのフィードバック、顧客との会合、市場シェアの分析、顧客からの賛辞、補償請求及びディーラー報告を含めることができる。
解説
■本箇条は、QMSの成果の測定の一つとして、顧客が組織の顧客要求事項の満足度をどのように受けとめているかの情報を、入手、使用の方法を決めて監視することの要求事項である。
■顧客満足の定義がISO9000:2005年版では「顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受け止め方」であったが、ISO9000:2015では「顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受け止め方」に変更となった。“顧客の要求事項”から“顧客の期待”に変更になったことにより、当たり前品質に対する満足度に加え、潜在的ニーズに対する尺度が加わったことになる。
■組織の事業継続にとって、最も重要な顧客満足に関する要求事項が規定されている。QMSのパフォーマンスを測定するための重要な指標の一つが顧客満足である。顧客満足情報を入手、分析し、必要な改善活動を展開することによりQMSの有効性を向上させ、その結果が、また、顧客満足向上につながるスパイラルアップが重要である。
■顧客満足の監視には、注記にあるように、様々な方法がある。一般的に不良発生件数、数量違いや納期遅延などの数値化で、満足度を監視している例もあるが、顧客視点としては、納入された製品・サービスに関する品質だけでなく、組織と顧客間で日常的に発生している様々な問題も、顧客満足と関連している。したがって、常に多面的な情報収集活動が必要であろう。
また、顧客のニーズだけでなく、顧客の期待に関する情報は、将来の満足度向上の貴重な情報になるものと思われる。
■組織は、情報の入手及び使用方法を決定する必要がある。顧客満足情報の入手については、困難を伴う場合もあるが、組織の置かれた環境の中で、適切で、有効な方法を調査し、決定しておく必要がある。注記以外にも、次のような事例がある。顧客アンケート調査、顧客聞き取り調査や営業報告、リピートオーダー率、顧客苦情や要望、顧客満足調査会社からの報告など。
■入手された情報は、データ分析され、マネジメントレビューを通じて、継続的改善が図られる。
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、「顧客満足情報入手・分析・使用規程」、「顧客クレーム対応手順」、「顧客満足改善・計画書/実施記録」、「顧客満足度報告書」など。
・監視及び測定からの適切なデータ及び情報を分析し、評価すること。
・分析の結果は、以下の事項を行うために用いる。
注記:データを分析する方法には、統計的手法を含めることができる。
解説
■本箇条ではQMSの評価を目的としたデータ及び情報の分析に関する要求事項がまとめられている。各箇条で得られたデータ及び情報がここに集約され、分析される。
■データ及び情報の分析から提供すべき情報(アウトプット)として、規格はa)~g)項を規定している。
■分析結果は、マネジメントレビューで報告される。
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、「顧客満足度調査・分析結果報告」、「検査結果報告書」、生産ラインなどからの「月報」、「供給者評価結果報告書」など。
QMSが次の状況にあるか否かに関する情報を提供するために、あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなければならない。
解説
■有効性(effectiveness)とは、計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度のことである。
■内部監査は、その組織自体が行うか、または組織の代理で外部関係者が行っても良い。
文書、記録例
本箇条で文書化された情報の要求はないが、「内部監査規程」など。
注記:手引としてJIS Q 19011を参照。
「考慮」の解説
「考慮に入れる(take in to account)」は、考慮する必要があり、かつ、除外できない。
「考慮する(consider)」は、考慮する必要があるが、除外できる。
解説
■内部監査プログラムに関しても、組織に影響を及ぼす変更を考慮に入れる(take in to consideration)必要がある。
■監査員は、実行可能な限り、監査の対象となる活動から独立した立場にあり、利害抵触がないことが望ましい。内部監査において特定された不適合は、是正処置が必要である。
■修正と是正処置は、遅滞なく実施されることが求められている。
文書、記録例
「内部監査規定」、「内部監査プログラム」、「内部監査計画書」、「内部監査報告書」、「不適合報告書/修正・是正処置記録」、「フォローアップ記録」、「内部監査員教育、訓練及び認定記録」など。
・トップマネジメントは、組織のQMSが、引き続き、適切、妥当かつ有効で更に組織の戦略的な方向性と一致することを確実にするために、あらかじめ定めた間隔でQMSをレビューする。
解説
■マネジメントレビューは、ハイレベル(経営戦略的)なものであることが望ましく、詳細な情報の徹底的なレビューでなくともよい。
■全ての項目を同時にレビューする必要はなく、一定の期間に渡って行って良い。役員会のような管理層の定期会合の活動に含めても良い。
■マネジメントレビューの文書化された情報は、複数でもよい。
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、箇条9.3.3において、マネジメントレビューに関連する全体としての文書化された情報が要求されている。
・マネジメントレビューは、以下の事項を考慮して計画し、実施する。
解説
■マネジメントレビューの基本的な考え方は同じである。なお、2008年版の「QMSに影響を及ぼす可能性のある変更」は、「内部・外部の課題の変化、利害関係者からのフィードバック、リスク及び機会に取組むための処置」に示された。また、品質目標、外部提供者のパフォーマンス、資源の妥当性を考慮することが追加された。
■b)項の「外部及び内部の課題」は、組織及びその状況の理解(4.1)で明確にされた課題である。
■e)項で、リスク及び機会(6.1)に関連する戦略的な項目を盛り込むことが求められている。
文書、記録例
箇条9.3.2では、文書化された情報の要求はないが、箇条9.3.3において、マネジメントレビューに関連する全体としての文書化された情報が要求されている。
「データ分析・評価結果報告書」など。
・マネジメントレビューからのアウトプットには、以下の事項に関する決定及び処置を含める。
・マネジメントレビューの結果の証拠として文書化した情報を保持(記録類)。
解説
■具体的なアウトプットの項目が明確にされている。
■アウトプットには「QMSが引き続き適切で、妥当で、かつ、有効であることに関する結論」が求められている。
■マネジメントレビューの文書化された情報は、複数でもよい。
文書、記録例
「マネジメントレビュー議事録」、「役員会議事録」、「経営戦略会議議事録」など。
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