QMSの確立、実施、維持及び継続的改善に必要な資源を決定し、提供する。
以下の事項を考慮。
解説
■資源には人的資源、天然資源、インフラストラクチャ(建物、生産設備、ユーティリティ、輸送設備、ITシステムなど)、技術、資金が含まれる。人的資源には専門知識、技能が含まれる。資源は外部提供者によって補完してもよい。
■自社内の資源で事業が完結できるか見極める。(箇条8.2.2b参照)
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、「要員計画/人員配置計画」、「設備計画」など。
QMSの効果的な実施、プロセスの運用管理のために必要な人々を明確にし、提供する。
解説
QMS及びプロセスの運用に必要な要員に関する資源の要求事項である。
文書、記録例
文書化された情報の要求はない。
製品及びサービスの適合を達成するためのプロセスの運用に必要なインフラストラクチャを明確にし、提供し、維持する。
注記:インフラストラクチャには、以下を含めることができる
解説
■インフラストラクチャは、製品・サービスの要求事項への適合に影響を与える要素となることがあるため、規格では“必要とされる”インフラストラクチャを明確化(特定)してマネジメントシステムの中できちんと維持管理することを要求している。
■インフラストラクチャは、製品・サービス要求事項(顧客要求、法令・規制、社会的要求、経済的要求 等)を満たすために、計画、導入(提供)、維持管理されることが肝要である。
■インフラストラクチャの維持管理は、上記要求事項(所期のニーズ)を継続して満足させることが目的と考えられ、例えば、機能/性能、信頼性、安全性、コストなどを明確にし、保全、点検活動の方法、頻度の手順を策定、運用していくことが推奨され、これには生産、業務の効率、予防保全の考え方を含めることもできる。
■dの情報通信技術は、基幹システムの重要な部分を占める場合がある。
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、「設備予算/計画」、「設備台帳」、「設備保全手順」、「定期補修要領書」、「サーバ管理手順」など。
プロセスの運用に必要な環境、並びに製品及びサービスの適合を達成するために必要な環境を明確にし、提供し、維持すること。
注記:適切な環境は、以下のような人的及び物理的要因の組み合わせで有り得る
これらの要因は、提供する製品及びサービスによって異なる。
解説
環境は、製品・サービスの要求事項への適合に影響を与える要素となることがあるため、規格では“必要とされる”環境を明確化(特定)してマネジメントシステムの中で運営管理することを要求している。
■製品・サービスの要求事項への適合に影響を与える直接的な環境は、温度、湿度、照度、振動、騒音、静電気、埃、細菌類などがあり、必要性の要否を明確にして具体的な管理基準のもと運営管理しなければならない。
■間接的な環境には、“その気にさせる”表彰制度などの心理的側面、“腰をかがめる”、“重量物取扱 い”などの人間工学/労働安全衛生的側面もあるが、QMSの中に含めるか否かは組織の判断による。
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、「作業管理手順」(通常の手順書に作業環境に関する規定を含める場合もある)、「作業環境記録」、「クリーンルーム管理基準」など。
要求事項に対する製品及びサービスの適合を検証するために監視又は測定を用いる場合、結果が妥当で信頼できるものであることを確実にするために必要な資源を明確にし、提供する。
以下の事項を満たすこと。
適合性の証拠となる文書化された情報の保持(記録類)。
解説
■箇条7.1.5.1と7.1.5.2に分けたのは、サービス業への配慮である。
■本箇条では、製品品質、サービス品質の保証はその多くが代用特性を持って測定されたり、製品製造、サービス提供の過程を監視したりすることにより行われる。この監視・測定行為の“確からしさ”は品質保証の要となるため、監視・測定項目の明確化とともにそれに用いられる監視・測定の方法を機器の適切性、合目的性、即ち、精度、信頼性などが確実に管理されることが必要となる。これを基に規格は、監視・測定機器及びその管理手順に対する要求事項を規定している。
■監視・測定項目の特定、使用する機器類を有する場合は、その指定を明確にしておかなければならないが、「QC工程表」、「検査・試験要領書」、各種「規程、手順書」、「仕様書」などで記述される例が多い。
■監視・測定項目の重要性や機器の機能、精度、複雑性に応じて文書化が必要になって来る。
■人が監視測定する場合(例えば、テイスター、官能検査)は、その業務及び力量を明確にする必要がある。
文書、記録例
「監視・測定機器管理台帳」、「監視・測定機器管理手順」、「トレーサビリティ証明書」、「校正証明書」、「機器検証記録」、「校正外れ影響評価、処置報告書」、「監視・測定用ソフトウェア検証報告書」、「限度(色)見本」、「力量の記録(人が資源の場合)」、「視力検査表」、進捗管理等のチェックリストなど。
測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合、又は組織がそれを測定結果の妥当性に信頼を与えるために不可欠な要素とみなす場合には、測定機器は、以下の事項を満たすこと。
準に照らして校正又は検証を行う。そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いた基準を、文書化した情報として保持(記録類)
解説
■箇条7.1.5.1と7.1.5.2に分けたのは、サービス業への配慮。7.1.5.2は、組織によっては適用不可能の場合が考えられる。
■規格は、測定値の正当性が保証されなければならない場合、即ち要求事項を満足している状態を顧客に保証する場合、監視・測定機器の管理要件をa)~e)項で規定している。
■a)項では、機器のトレーサビリティ体系に基づく校正、検証を要求しており、国家標準のような標準が存在しない場合は校正、検証に用いた基準(例えば、社内で管理されている基準機での値など)を明確にして記録することが求められている。
■b)項では、校正の状態に関する識別要求である。
■c)項では、校正、検証によって確立された適切な状態が不用意に変わってしまい無効とされることのないように、機器の使用方法、構造などに応じた保護処置(例えば、シーリング、キャップ、ねじロック、保管場所指定など)を講じることの要求である。また、取り扱い、保守、保管で機器そのものの損傷、劣化の防止を確実に実施することが求められている。(例えは、素手での取り扱い、保管場所の錆び対策の配慮など)
■意図した目的に適していないことが判明した場合、当該機器でこれまで測定された結果の妥当性を評価しなければならない。評価と影響を受けた製品・サービスに対する処置は当該機器の日常点検の内容、頻度にもよるが、最長で前回の校正時点まで遡らなければならないことも考えられ、校正間隔やその間の日常点検手順はこの様なリスクも考慮すると良いものと思われる。また、規格では記録として、校正及び検証の結果(校正証明、検証結果報告書、トレーサビリティ証明書など)のみが求められているが、製品・サービスの内容によっては、評価結果とともに、講じた処置があればその処置の内容についても記録されるべきものと考える。
■測定機器には、計量値を決定するための計器のほか、標準器、標準物質、ソフトウェア等、あるいはこれらの組合せがある。校正は、これらを国際又は国家計量標準にトレース可能な計量標準に照らして測定制度を検証することである。一方、検証は、標準サンプルなどを使用して、測定機器が初期の測定精度あるいは測定能力を維持していることを確認する行為と解釈される。
文書、記録例
文書化された情報は、箇条7.5.1.1でも要求されている。
「監視・測定機器管理台帳」、「監視・測定機器管理手順」、「トレーサビリティ証明書」、「校正証明書」、「機器検証記録」、「校正外れ影響評価、処置報告書」、「監視・測定用ソフトウェア検証報告書」など。
プロセスの運用に必要な知識、並びに製品・サービスの適合を達成するために必要な知識を明確にする。
知識は維持され、必要な範囲で利用できる状態にしなければならない。
変化するニーズ及び傾向に取組む場合、現在の知識を考慮し、必要な追加の知識及び要求される更新情報を習得する方法又はそれらにアクセスする方法の決定。
注記1:組織の知識は、組織に固有な知識であり、それは経験によって得られる。それは、組織の目標を達成するために使用され、共有される情報である。
注記2:組織の知識は、以下の事項に基づいたものである。
解説
■ここでいう知識はプロセスの運用、製品・サービスへの適合のための組織が必要とする「固有な知識(技術、ノウハウ)」である。それらが、特定の個人ではなく、組織の知識(技術)として管理することを要求している。これらを組織全体で利用できる形に纒められた知識が本箇条の組織的な知識と呼ばれるものである。
■この要求事項を導入した目的は、知識の喪失から組織を保護するため、知識を獲得することを組織に推奨するためである。
■利害関係者(特に顧客)のニーズは、変化していくものであり、今の知識だけでは対応できない場合は、追加の知識を習得する方法を決定することも要求されている。
■知識の獲得例としては、経験から学ぶ、指導者を得る、ベンチマークするなど。知識の喪失例としては、スタッフの離職、情報の取得及び共有の失敗など。
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、「過去のトラブル記録」、「設計基準」、「作業標準手順書(SOP)」、「作業マニュアル」、「レシピ」など。
以下の事項を行う。
注記:適用される処置には、例えば、現在雇用している人々に対する教育訓練の提供、指導の実施、配置転換の実施などがあり、力量を備えた人々の雇用、そうした人々との契約締結なども有り得る。
解説
■本箇条は、QMSのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務を行う要員に関して、必要な力量を求める一般要求事項である。
■力量が要求されているのは、組織の管理下で行う人とされているので、社員以外の要員も含まれる。
■力量(competence)とは、意図した結果を達成するために、知識及び技能を適用する能力。実証された力量は、“適格性”ともいう。
■力量がある根拠として、実績、知識、経験、公的資格、教育、訓練、技能など必要に応じた力量の定義、判断根拠を決定する必要がある。
■力量には、「幅(多様性)」と「深さ(成熟度)」や「資格(公的・社内)、免許」などがある。
文書、記録例 「力量評価表」、「有効性の評価記録」、「教育訓練実施記録」など。
組織の管理下で働く人々は、以下の事項に関して認識をもつ。
解説
■正社員以外の、組織の管理下で働く人々も、要員として考慮する。
■組織の管理下で働く人々は、担当している業務の製品・サービス要求事項との関連性並びに重要性を認識することが必要であり、規格要求事項となっている。例えば、業務結果の適切な評価を含み、担当業務の目的、関連する他の業務への影響、顧客への影響/関係性などを教育・訓練(個人面接、目標面接など)に組み込むことは、自らの貢献度合いを認識するために有効である。
■品質目標の達成に対する貢献度合いを認識させることを求めている。(評価/フィードバック等が考えられる)
■組織の管理下で働く人々には、行っている活動がもたらす結果を、認識してもらうことが求められる。
文書、記録例
文書化された情報の要求はない。
QMSに関連する内部及び外部のコミュニケーションを実施する必要性を決定すること。
解説
■本箇条は、QMSの運用に必要な情報が、組織内において報告、指示がなされるなど双方向コミュニケーションのプロセスを確立、運用することを規定した要求事項である。
■QMSに関して情報交換ができる会議体や情報交換ルートを確立しておく必要がある。部門間、部門内などのコミュニケーションが考えられ、品質方針/目標のトップダウン、人員・設備計画、予算、品質問題、顧客クレーム対応、法令・規制遵守状況等の目的に応じたシステムを工夫すると良い。
■外部のコミュニケーションの例としては、委託先への通達、CSR報告、IR情報、利害関係者とのコミュニケーション、リコール時のお知らせなど。
■種々のコミュニケーションの担当者を決めておくことが重要である。
文書、記録例
文書化された情報の要求はないが、「会議体一覧表」、「コミュニケーション体系」など。
QMSは、次の事項を含むこと。
注記:QMSのための文書化した情報の程度は、以下のような理由によって、組織で異なる場合がある。
「文書化した情報」の解説・・・
解説
■「文書化した情報」は、従来の「文書・記録」であり、組織が管理し維持するよう要求されている情報、及びそれが含まれている媒体を意味する。
■要求事項の中で、「文書化した情報を維持する(maintain)」の場合は「文書類」を示し、「文書化した情報を保持する(retain)」の場合は「記録類」を示している。
■文書化した情報は、あらゆる形式及び媒体の形をとることができる。(例:データベース・絵・床テープ・写真・VTR・表・チャート・模型・見本・動画マニュアル・ナビゲーションなど)
■QMSで使用する「文書化した情報」は、業務や他のマネジメントシステムで作成された文書・記録 類を使用してもよい。
■既にQMSを運営している場合は、「品質マニュアル」が有効かもしれない。
■「必要と組織が決めた」の意味は、利害関係者の納得が得られるとの視点から、組織が決めることが求められる。
文書、記録例
この箇条で要求される文書化された情報はないが、「文書・記録一覧」、「文書・記録管理手順」、「品質マネジメント文書体系」など。
文書化した情報を作成及び更新する際、以下の事項を確実にすること。
解説
■文書化した情報の作成及び更新に関する要求事項である。
■作成された文書は、レビューされ、承認されることが求められている。
■承認された文書、即ち組織にとって正式な手順/規定で運用していくことがマネジメントシステムの基本である。
■a項で具体的な識別方法が要求されている。
■文書化に関するIT技術の応用を意識している。ISOと言えば、紙媒体の文書・記録というイメージからの脱却を意識している。
文書、記録例
この箇条で要求される文書化された情報はないが「文書・記録一覧」、「文書・記録管理手順」など。
解説
■文書化した情報に関する機密性(Confidentiality)と完全性(Integrity)と可用性(Availability)に関する要求事項であり、文書化した情報の利用者の業務に支障がないようにすることを求めている。(電子化された情報に関してISMSの要求事項を取り入れた)
■手順書などを、必要な時に、必要なところで、利用可能な状態に維持する。(可用性)
■社外秘文書などの施錠管理やアクセスに関するルールの設定。(機密性)
■社内文書やデータなどが改ざんされないような状態に維持する。(完全性)
文書、記録例
この箇条7.5.3.1で要求される文書化された情報はないが、「文書・記録一覧」、「文書・記録管理手順」、「電子化された情報に関するポリシー」など。
QMSの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書化した情報は、必要に応じて特定し、管理しなければならない適合の証拠として保持(記録類)する文書化した情報は、意図しない改変から保護する。
注記:アクセスとは、文書化した情報の閲覧だけの許可に関する決定、閲覧及び変更の許可及び権限に関する決定と理解することができる。
解説
■QMSを確立・運用・維持するための基本的な手段である文書管理について具体的に組織がやるべき事項を要求している。
■アクセスとは、文書化した情報に対するアクセス権限の管理を意味している。例えば、電子文書の閲覧、追加、削除、書換等の権限の設定が考えられる。あるいは、紙媒体の書庫への入室権限も考えられる。
■最新版管理は大切である。また、変更の識別、すなわち変更番号/記号の明示及び最新版の識別を確実にする台帳管理などが考えられる。また、電子ファイルは最新版用のフォルダなどを利用して旧版との識別管理が考えられる。
■読みやすいこととしては、判読不能な文字、汚損などによる判読不能などは伝達機能が劣るため、避けること。
■不要になった文書は、ルールに従って、適切に廃棄する。
■外部文書も利用可能なこと、外部文書には、顧客支給図面・仕様書、指示書、ISO規格書、法令・規制書などが一般的に取り上げられている。
文書、記録例
この箇条7.5.3.2で要求される文書化された情報はないが、「文書・記録一覧」、「文書・記録管理手順」など。
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