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iso_14_00 [2023/11/23 15:50] – 作成 norimasa_kanno | iso_14_00 [2023/11/29 15:14] (現在) – [0.4 Plan・Do・Check・Actモデル] norimasa_kanno | ||
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====== 0 序文 ====== | ====== 0 序文 ====== | ||
- | ここにコンテンツが入る | + | ===== 0.1 背景 ===== |
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+ | 人類が持続可能な社会を目指すためには環境、社会、経済という3つの柱がバランスよく成立していることが不可欠である。\\ | ||
+ | 環境汚染の悪化、資源の浪費、増大する廃棄物、気候変動、生物多様性の損失などにより、地球環境が悪化しており、対応する法規制も厳しさを増している。そのような状況下において、企業には持続可能な地球環境を維持するため適切な活動及びその活動に対するコンプライアンスが強く求められている。\\ | ||
+ | こうしたことから、EMSを実施することによって環境マネジメントのための体系的なアプローチを採用することが重要である。 | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | この規格を制定するに当たり、規格改訂の委員会は、以下の基本方針を基にした。 | ||
+ | * ①サステナビリティ(持続可能な発展)及び社会的責任 | ||
+ | * ②環境パフォーマンスの改善 | ||
+ | * ③法令規制への順守 | ||
+ | * ④製品・サービスへの対応強化(バリューチェーン/サプライチェーンにおける環境影響) | ||
+ | * ⑤製品情報の外部コミュニケーション | ||
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+ | 持続可能な発展には、環境的、社会的及び経済的サブシステム(三本柱)のバランスの確立が不可欠で、環境マネジメントの体系的なアプローチによる取組みの採用が重要となっている。\\ | ||
+ | また、今回提議されたキーワードの中で特に最初の3項目、サステナビリティ(持続可能な発展)及び社会的責任、環境パフォーマンスの改善、法令規制への順守が今回の改訂内容の中で色濃く反映されている。サステナビリティの視点においては、サプライチェーンのマネジメントの一環としてライフサイクルという概念が導入された。これまでも暗黙的に組み込まれていた項目であるが、今回は環境側面を特定する段階から製品ライフサイクルを考慮することを明確に求めている。\\ | ||
+ | また、環境パフォーマンスの向上についても序文の中で、環境パフォーマンスを向上するための環境マネジメントシステムの改善が謡われており、決して新しい要求事項ではないが、あくまでもマネジメントシステムのアウトプットはパフォーマンスでなければならないと、成果の出るマネジメントシステムを強く求めている。そして法規制順守については兼ねてからこの仕組みを運用するためのべースであったが、認証取得組織が法令違反を起こすなどの事故が増加していることからの原点回帰を促しているものと考えられる。 | ||
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+ | ===== 0.2 EMSの狙い ===== | ||
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+ | この規格の目的は、環境を保護し、社会経済面のニーズと均衡を図り、変化する環境状態に対応するための枠組みを提供することである。そして、EMSの意図した成果を達成することを可能にする要求事項を提供している。EMSによって、環境を保護し、有害な影響を緩和し、順守義務を果たし、環境パフォーマンスを向上させることによって、組織は、持続可能な開発に寄与することを後押しすることができる。 | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | * ・社会経済的なニーズとバランスした体系的な枠組み提供 | ||
+ | * ・ライフサイクルの視点 | ||
+ | * ・市場における組織の位置づけの強化。財務上、運営上の便益 | ||
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+ | 「社会経済的なニーズとのバランス」という表現はまさに持続可能性の用語の定義を引用しており現代の世代が、将来の世代の利益や要求を充足する能力を損なわない範囲内で環境を利用し、要求を満たしていこうとする理念である。\\ | ||
+ | ライフサイクルという用語は新規である。ライフサイクルの考え方は、当該組織のポイント(云わば点の管理)のみならず、上流においては材料・原料の調達に関わる環境活動、下流においては製品・サービスの最終顧客による廃棄に至るまでの環境活動を視野に入れること(言わば線や面の管理)を意味している。\\ | ||
+ | 意図した成果に関しては、箇条1に定義されている。0.2の“組織に対する潜在的で有害な影響”は新規の概念である。また、“市場における組織の位置付け~”は、0.1の三本柱のバランスと整合している。\\ | ||
+ | そして、「市場における組織の位置づけの強化、財務上、運営上の便益」の部分はビジネス上のメリットを示している。環境マネジメントを受身で運営するのではなく、ポジティブに捉らえてこれを活用することによって、競争優位を獲得でき、ひいてはビジネスの成功や成長に寄与することができるという狙いを示しているのである。\\ | ||
+ | 例えば、消費者あるいは社会全体がエネルギー配慮製品を求めている状況において、先進的な省エネ製品を上市することによってトップランナーに成りえることなどを指し示している。 | ||
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+ | ===== 0.3 成功のための要因 ===== | ||
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+ | EMSの成功は、人にかかっている。全ての階層におけるコミュニケーションとコミットメントによって、有益な環境影響を増大させるような機会、中でも戦略及び競争力に関連のある機会を活用することができる。\\ | ||
+ | トップマネジメントは、環境マネジメントを組織の事業プロセスに統合し、組織の全体的なマネジメントシステムに組み込むことによって、リスク及び機会に効果的に取組むことができる。しかし、この規格の採用そのものが、最適な環境上の成果に必ずしもつながるわけではない。この規格の適用は、組織の状況によって異なり得る。2つの組織が、同様の活動を行っていながら、それぞれの順守義務、環境方針におけるコミットメント、環境技術及び環境パフォーマンスの到達点が異なっていても、どちらの組織もこの規格の要求事項を満たしていることがある。 | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | ■EMSを組織の事業プロセス、戦略及び意思決定に統合。 | ||
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+ | トップマネジメントのコミットメントの重要性は、2004年版でも謳われていた。\\ | ||
+ | 2015年版では、更に一歩踏み込んで成功要因の中核として、中長期の戦略的な環境活動計画へのトップマネジメントのリーダーシップが求められている。(箇条5参照)\\ | ||
+ | また、ここでは他の事業との兼ね合いで考えて、優先順位付けをして経営判断をすることを求めていることから、環境最優先という考えではないものの、これを経営の意思決定のパーツとして取り入れることによって、より効果的かつ合目的的な活動ができることを示唆している。そして、システムの運用において「リスク及び機会」の考え方を取り入れることによって、当初の目的に対しての乖離幅を把握し、進捗管理をしていく中で修正、修復していくことによって組織の目的や目標により近づいていく運用ができるという考えも同時に示している。\\ | ||
+ | この戦略的な計画の中でリスク及び機会への取組みが求められている。(箇条6参照) | ||
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+ | ===== 0.4 Plan・Do・Check・Actモデル ===== | ||
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+ | 2004年版に引き続き2015年版のEMSのアプローチは、Plan・Do・Check・Act(PDCA)モデルが採用された。これは、附属書SLの採用による。\\ | ||
+ | PDCAモデルと箇条の関係は、次のようになる。 | ||
+ | * ・Plan :箇条6 | ||
+ | * ・Do :箇条7、箇条8 | ||
+ | * ・Check :箇条9 | ||
+ | * ・Act :箇条10 | ||
+ | 箇条5の「リーダーシップ」は、PDCAサイクルを円滑に廻すための重要な推進力である。 | ||
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+ | {{ : | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | 2004年版に引き続き、PDCAアプローチの概念が枠組みに導入された。\\ | ||
+ | 図1は、これまでのモデルと大きな相違はないが、“組織の状況”の理解として“内外の課題”と“利害関係者のニーズ・期待”を組織自らが決定することが求められている。システムへのインプットとアウトプットが明確にされ、ビジネスマネジメントの一部としてより明確に捉えられるようになった。 | ||
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+ | ===== 0.5 国際規格の内容 ===== | ||
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+ | この規格は、附属書SLをベースに作られている。\\ | ||
+ | この規格は、組織が、環境マネジメントシステムを他のマネジメントシステムの要求事項に統合するために共通のアプローチ及びリスクに基づく考え方を用いることができるようにしている。\\ | ||
+ | この規格は、自己宣言、利害関係者による確認、外部機関によるEMSの認証・登録等によって、適合性を実証することができる。 | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | 附属書SLの採用により、他のマネジメントシステム(品質、情報セキュリティ、事業継続)との統合は容易になった。 | ||