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事例としては、「マクロ環境分析」、「ミクロ環境分析」、「SWOT分析」「組織の課題」「事業計画のためのインプット情報」など様々な手法が考えられる。組織が既存で活用している手法や記録等が要件を満たしていれば準用も可能である。 | 事例としては、「マクロ環境分析」、「ミクロ環境分析」、「SWOT分析」「組織の課題」「事業計画のためのインプット情報」など様々な手法が考えられる。組織が既存で活用している手法や記録等が要件を満たしていれば準用も可能である。 | ||
- | 図 | + | {{ : |
+ | ===== 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 ===== | ||
+ | * ・顧客要求事項並びに適用される法令・規制要求事項を満たす製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に与える影響又は潜在的影響のため、次の事項を決定すること。 | ||
+ | * a. QMSに密接に関連する利害関係者 | ||
+ | * b. QMSに密接に関連する利害関係者の要求事項 | ||
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+ | * ・要求事項に関する情報は、監視し、レビューする。 | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | ■箇条4.2「利害関係者のニーズ及び期待の理解」では、「関連のある利害関係者」の「関連のある要求事項」を特定することを要求している。 | ||
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+ | ■組織は、それらが特定された後に、これらの利害関係者及び彼らの要求事項に関して保有している情報を監視・レビューすることが求められる。 | ||
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+ | ■「密接に関連する利害関係者」とは、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品又はサービスを一貫して提供する能力に影響を与える団体または個人であり、時の経過と共に変化するものである。 | ||
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+ | ■ISO9000:2015用語の定義では、利害関係者の例として「顧客、所有者、組織内の人々、提供者、銀行家、規制当局、組合、パートナー、社会(競争相手または対立する圧力団体を含むことがある)」を挙げている。顧客以外に株主や従業員が利害関係者に含まれていることは、「企業の継続的発展(ゴーイングコンサーン)」も「要求事項」に含まれることを示唆していると考えられる。 | ||
+ | |||
+ | ■QMSの意図した成果が顧客満足の向上である以上、“顧客”が最も重要な利害関係者であることは変わらない。利害関係者が、QMSに密接に関連するかどうかを決定するのは、組織である。 | ||
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+ | **文書、記録例** | ||
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+ | 文書化された情報の要求はない。一方、箇条6.1「リスク及び機会への取組み」では、4.1「内外の課題」と4.2「利害関係者のニーズ」を考慮して「リスク及び機会」を決定するとある。 | ||
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+ | 実際に組織として、「市場調査」、「アンケート調査」等、あるいは、CSRレポート等で記載されるようなステークホルダーダイアログ/エンゲージメントを既に活用している場合は、それらもその役割を果たす。 | ||
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+ | ===== 4.3 QMSの適用範囲の決定 ===== | ||
+ | |||
+ | * ・QMSの適用範囲を定めるために、その境界及び適用可能性を決定する。 | ||
+ | * ・この適用範囲を決定するとき、下記事項を考慮する(consider)。 | ||
+ | * a. 4.1に規定する外部及び内部の課題 | ||
+ | * b. 4.2に規定する密接に関連する利害関係者の要求事項 | ||
+ | * c. 組織の製品及びサービス | ||
+ | * ・決定したQMSの適用範囲内で規格の要求事項が適用可能ならば、全て適用する。 | ||
+ | * ・QMSの適用範囲の文書化した情報を利用可能な状態にし、維持(文書類)する。 | ||
+ | * ・適用範囲では、対象となる製品及びサービスの種類を明確に記載し、QMSへの適用が不可能と決定した要求事項すべてに対してその正当性を示すこと。 | ||
+ | * ・顧客満足及び製品サービスの適合に影響を及ぼす場合は、全て適用する。 | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | ■箇条4.3「QMSの適用範囲の決定」では、QMSの要求事項が何に適用でき、何に適用できないのかという境界を規定しなければならない。「適用範囲」は、「文書化した情報(documented information)」として利用可能であり、維持することが求められる。適用範囲には、QMSにより網羅される製品及びサービスを提示する必要がある。 | ||
+ | |||
+ | ■ある要求事項が、組織のQMSの適用範囲内で適用できる場合には、組織は、その要求事項を適用不可能と決定してはならない。ある要求事項が適用できない場合(例えば、相当するプロセスを実施していない場合)には、組織は、その要求事項を適用不可能と決定することができる。ただし、これを適用しないことで、製品及びサービスの適合が達成されない、又は顧客満足の向上という組織の狙いが達成されないことがあってはならない。 | ||
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+ | ■ある活動が、顧客満足及び製品サービスの適合に影響を及ぼす場合、その活動を適用範囲に含めなければならない。例えば、顧客が、製品そのものだけでなく、アフターサービスを含めて満足することを期待している場合は、アフターサービスの部門も含めるべきである。 | ||
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+ | **文書、記録例** | ||
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+ | 適用範囲の情報がある場合は「品質マニュアル」、「適用範囲書」など。 | ||
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+ | ===== 4.4 QMS及びそのプロセス ===== | ||
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+ | ==== 4.4.1 プロセスの決定 ==== | ||
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+ | 必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む、QMSを確立し、実施し、維持し、継続的に改善するために以下の項目を決定する。 | ||
+ | * a)必要なインプット、期待されるアウトプット | ||
+ | * b)プロセスの順序及び相互作用 | ||
+ | * c)測定及び関連するパフォーマンス指標を含む判断基準及び方法 | ||
+ | * d)必要な資源及びそれが利用できることを確実にする | ||
+ | * e)プロセスに関する責任及び権限の割当て | ||
+ | * f)6.1のリスク及び機会への取組みの計画及び実施 | ||
+ | * g)プロセスの監視、測定、評価方法、及び、プロセスの変更 | ||
+ | * h)プロセス及びQMSを改善する機会 | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | ■本箇条では、プロセスアプローチに対する理解を深めるためにプロセスアプローチの採用に不可欠な要求事項をマネジメントシステムに対する一般的な要求事項としてまとめて記載している。ここでは、プロセスベースのQMSの導入、維持及び継続的改善も要求されている。 | ||
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+ | ■本箇条では、箇条0.3項のプロセスアプローチを要求事項という形式で表現している。この要求事項に従って、システムを確立し、実施し、かつ維持することが求められている。また、プロセスの明確化、相互関係の明確化(プロセスマップ等)、管理基準の設定、必要な資源の投入、運用状況の監視・改善は、QMSのPDCAそのものを表現している。 | ||
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+ | ■(プロセスマップの例) | ||
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+ | ■プロセスアプローチに取組む理由としては、事業活動をプロセスという観点でより詳細な単位に捉えなおすことにより、各プロセスの管理すべき項目が明確になり、顧客満足に向けた取組みを効率的に改善することが推進される。各プロセスからどのように結果が生み出されるかを理解することにより、組織はそのパフォーマンスを最適化することができる。 | ||
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+ | ■業務活動の変更や組織変更が必要になるのではなく、あくまでも全体の最適化を図るための手段として採用すべきある。 | ||
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+ | ■箇条5.1.1.dのトップマネジメントへの要求事項でもプロセスアプローチの利用促進が求められている。 | ||
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+ | ■プロセスの概念は、次項の図(タートル図)の様に考えることができる。プロセスの文書化要求はないが、考えを明確にするために、文書化は役立つ場合がある。 | ||
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+ | {{ : | ||
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+ | **文書、記録例** | ||
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+ | この箇条で要求される文書化された情報はないが、箇条4.4.2で要求されている。 | ||
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+ | ==== 4.4.2 以下の項目を実施する。 ==== | ||
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+ | * a. プロセス運用の支援に必要な文書化した情報の維持(文書類) | ||
+ | * b. プロセスの計画的実施の実証に必要な程度の文書化した情報の保持(記録類) | ||
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+ | **解説** | ||
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+ | ■「プロセス運用の支援に必要な文書化した情報の維持(maintain)」と「プロセスの計画的実施の実証に必要な程度の文書化した情報の保持(retain)」の二つの文書化された情報を要求している。 | ||
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+ | ■「文書化した情報を維持する(maintain)」場合は「文書」、「文書化した情報を保持する(retain)」場合は「記録」を意味する。 | ||
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+ | ■「品質マニュアル」というタイトルの文書は要求されていないが、「プロセス運用の支援に必要な文書化した情報」は要求されている。 | ||
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+ | **文書、記録例** | ||
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+ | 「品質マニュアル」、「プロセスマップ」、「プロセスのタートル図」、「プロセスの運用手順」、「プロセスの監視・測定結果」など。 | ||
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