ISO 9001:2008 の発行について 8年ぶりの規格改正
2008年11月16日
- ISO の品質マネジメントシステム規格の改正 -
ISO(国際標準化機構、本部ジュネーブ)は、品質マネジメントシステム規格として国内外で広く使用されているISO 9001 の改正版(ISO 9001:2008)を、平成20 年11 月14 日(現地時間)に発行しました。
今回の改正は、現行のISO 9001の要求事項の明確化とISO 14001 との整合性の向上を目的として行われました。
なお、経済産業省では、今回のISO 9001 の改正に合わせて、翻訳規格であるJIS Q 9001 の改正作業を進めています。
改正版のJIS Q 9001 は、所定の手続きを経て年内に公示される予定です。
ISO 9001:2008 改正の概要
今回の改正は、2003 年にブカレスト(ルーマニア)で開催されたISO(国際標準化機構)/TC176(品質管理及び品質保証)総会における見直しの決議から、2008 年ノビサド(セルビア)総会まで約5年の議論を経て行われました。
要求事項の明確化やISO 14001との整合性の向上の観点から、現行のISO 9001 に対して約70か所が改正されています。
例えば、以下のような改正がなされています。
要求事項の明確化
一般要求事項【4.1】の「アウトソースしたプロセス」の確実な管理のために、組織が品質マネジメントシステムの中で定めるべき事項として、「管理の方式及び程度」を明示するとともに、注記による説明が追加されています。
是正処置【8.5.2】に規定する「是正処置において実施した活動のレビュー」を、レビューの対象を明確にするため、「とった是正処置の有効性のレビュー」と変更されています。
ISO 14001 との整合性の向上
記録の管理に関する要求事項【4.2.4】について、ISO 14001 の形式に整合されています。
今回の改正は、ISO 9001 の要求事項の明確化等を目的とするものであり、要求事項を追加・変更するものでは無いようです。
ただし、今回の改正で現行のISO9001 の要求事項の一部に含まれていた曖昧さが解消されたことは、ISO9001 を導入している組織に対し、自らの品質マネジメントシステムを再確認する機会を与えるものと考えられます。
ISO 9001 の概要
ISO 9001(品質マネジメントシステム?要求事項)は、組織が品質マネジメントシステムを構築する際の基準文書として、国際的に使用されています。
ISO 9001 は、次のような組織が活用できる任意の規格です。
1.顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合
2.品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用、並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して、顧客満足の向上を目指す場合
主な規定項目は、
1.品質マネジメントシステム(一般要求事項、及び文書化に関する要求事項)、
2.経営者の責任(経営者のコミットメント、顧客重視、品質方針、計画、及びマネジメントレビュー)、
3.資源の運用管理(要員の力量、インフラストラクチャー経営基盤、作業環境)、
4.製品実現(計画、契約、購買、設計・開発、製造・サービス提供、保存、トレーサビリティ)、
5.測定、分析及び改善(顧客満足、内部監査、プロセスの監視、製品の測定、不適合品の管理、継続的な改善、是正処置)
に関する要求事項です。
ISO 9001 のこれまでの経緯
ISO 9001 の初版に相当するものは、昭和62 年(1987 年)に発行され、その後、平成6年(1994年)及び平成12年(2000年)に改正され、現在に至っています。
ISO9001:2000年版の改正時のポイント
平成12年(2000年版)の改正のポイントは、次のとおりです。
1.あらゆる業種及び規模の組織に適用しやすいようにする。
2.ISO 9000(品質マネジメントシステム?基本及び用語)及びISO 9004(品質マネジメントシステム?パフォーマンス改善の指針)との整合性をとるとともに、発行のタイミングを合わせる。
3.ISO 14001(環境マネジメントシステム?要求事項及び利用の手引)との整合性を向上させる。
JIS Q 9001 の改正について
今回のISO 9001の改正に合わせて、この翻訳規格であるJIS Q 9001の改正作業を進めています。
所定の手続きを経て、年内に経済産業大臣名により公示される予定です。
現行のISO 9001:2000年版 から改正版のISO 9001:2008年版 への移行期間が、改正版の発行から24 か月間であるということです。
すなわち平成22年11月までには、移行審査を完了させなくてはいけないことになります。
今回の改正点に関してのQ&A
(問1)
1.1項等で法令順守が強化されているように感じています。
ISO14001のようにシステマティックに順守評価しなくてはいけないのでしょうか?
(回答1)
改訂の意図である「望まれる成果を生み出すためのQMS」に基づき、製品要求事項に適合するためにそれぞれの組織で決めてください。
規格で明確に要求されてはいませんが、業務を進める上で適切な段階で、順守を確認する仕組みは必要です。
(問2)
7.5.4項で顧客所有物としての個人情報はどう考えればよいのでしょうか?
(回答2)
顧客から渡された図面や物品と同じく、例えば氏名・住所・電話番号等のリスト化された個人情報は顧客の所有物と考えられます。
また、個人情報保護法や顧客との契約状況に応じてそれぞれの組織が対象を決定してください。
顧客連絡先の個人電話番号、メールアドレスも含まれます。
ISO 9001 の国内認証件数の推移
ISO 9001 は、第三者認証制度における基準としても使用され、平成19 年12月末における我が国の認証件数は、42,825 件となっています。
(年末における認証件数の推移は下表参照)
ISO 9001 国内認証件数の推移
平成6年 | 928 |
平成7年 | 1,619 |
平成8年 | 2,526 |
平成9年 | 4,153 |
平成10年 | 6,627 |
平成11年 | 10,079 |
平成12年 | 14,912 |
平成13年 | 21,349 |
平成14年 | 27,557 |
平成15年 | 33,224 |
平成16年 | 39,922 |
平成17年 | 42,585 |
平成18年 | 43,564 |
平成19年 | 42,825 |
(財団法人日本適合性認定協会HP データより)
2008年11月16日
カテゴリー:CSR構築コンサル
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