長期治療が必要な「脳卒中」「肝疾患」の従業員に会社はどう対応する?

2020年1月27日

長期治療が必要な「脳卒中」「肝疾患」の従業員に会社はどう対応する?

ガイドラインの参考資料

 厚生労働省は3月1日、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の参考資料として、「脳卒中に関する留意事項」と「肝疾患に関する留意事項」を追加しました。
 昨年2月に公表されたこのガイドラインでは、疾病を抱える方々の治療と職業生活の両立を支援する企業に向けて、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするための取組みなどがまとめられています。
 ガイドラインの中には参考資料として「がん」に関する留意事項がありますが、今回、「脳卒中」と「肝疾患」に関する基礎情報と、各疾病について特に留意すべき事項がガイドラインに追加されました。
 今回追加した留意事項のポイントをみていきます。

脳卒中に罹患した労働者の両立支援にあたっての留意事項

 ガイドラインでは、脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対しての留意事項として、(1)再発等予防・治療のための配慮、(2)障害特性に応じた配慮、(3)復帰後の職場適応とメンタルヘルスを挙げています。

 (1)について、会社は、労働者から再発予防のために継続した服薬や定期的な通院等の申出があった場合には、必要に応じて配慮することが望ましいとしています。また、痛みやしびれなどの後遺症が残る場合があり、就業上の措置を要する場合があることに留意が必要としています
 (2)については、会社は、産業医等と連携するなどして、障害の程度や内容に応じて、作業転換等の就業上の措置を行うことが求められます。
 (3)については、脳卒中を発症し、手足の麻痺や言語障害といった後遺症に悩む労働者の中には、職場復帰後、発症前の自身とのギャップに悩み、メンタルヘルス不調に陥る場合もあるため、注意が必要としています。

肝疾患の両立支援にあたっての留意事項

 ガイドラインでは、肝疾患の労働者に対する留意事項として、(1)肝疾患の特徴を踏まえた対応、(2)肝疾患に対する不正確な理解・知識に伴う問題への対応を挙げています。
 (1)では、労働者から通院等への配慮の申出があれば、事業者は、海外出張や不規則な勤務を避けるなど、必要な配慮を検討し対応することが望ましいとしています。
 また、肝硬変の症状があり、病状が進行している場合、記憶力の低下や瞬時の判断が遅れるなどの症状が出ることもあるため、身体的な負荷は小さくとも車の運転など危険を伴う作業は控える等の措置が必要なこともあるため、個別に確認が必要であるとしています。
 厚生労働省は、今後、ガイドラインの普及や企業に対する各種支援によって疾病を抱える方々が治療と職業生活が両立できるような環境整備に取り組んでいくとしています。